2014年03月19日

僕が七不思議になったわけ/小川 晴央

僕が七不思議になったわけ (メディアワークス文庫)僕が七不思議になったわけ (メディアワークス文庫)
小川晴央

KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-02-25
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三年B組 中崎くん(仮)

 清城(きよしろ)高校の卒業式が執り行われた三月のある日、二年生の中崎夕也(なかさき ゆうや)は学校に携帯を忘れたのでこっそりと深夜に取りに戻った。すると校庭の桜の木がいきなり一本だけ枯れ、テンコという袴姿の少女が現れて、「お前を、次の七不思議に仮任命する」と言われて!? 三年生に上がって、空き教室で一人寂しく昼食を食べていると、そのテンコが現れる。そして「信じてもらう代わりに、お前に七不思議の力を使えるようにしてやろう」と言われて不思議な携帯を渡され――!? 第20回電撃大賞、金賞受賞作!


 あー、騙された!!(いい意味で)
ふう……前にコメントで閲覧者の方にオススメされていた通り、面白かったですよ!
なんでこれが電撃大賞じゃないの? いや、確かに大賞に置くか、って言ったらちょっと派手さに欠けるけど……。でも、いい話だよ?
 推薦文は時雨沢恵一先生です。
「読んだ貴方は騙される。読んで私が騙されたように。」
うん! バッチリ騙されたよ、時雨沢先生! いい推薦文書くねえ!!

 ネタバレあらすじー。
 主人公、深夜の学校に携帯を取りに行って「卒業式が終わる度に、我ら七不思議はリセットされる。さて、日付が変わるいまこの瞬間に学校にいたお主を欠けていた新しい七不思議に仮任命する!」と不思議な袴姿の少女、テンコに言われてその場は「幽霊だー!!」と逃げ帰る。→春の章。三年生に上がった主人公が、新しいクラスで友達が出来ずに空き教室で一人寂しく弁当を食べていると、テンコが現れて七不思議を説明して、その中の一つの『呪いのケータイ』の力を見せてくれる。その携帯とは、「学校内にいる全員の携帯の中身と繋がらせることが出来る」というもの。主人公はいつも中庭で自分と同じように一人でお弁当を食べていた美少女、朝倉(あさくら)さんの携帯を見ようとする。だがなんと、朝倉さんのメールフォルダには「君の顔を切り裂きたい」「殺す殺す殺す……」……などとストーカー的なメールが。助けたい、と思って七不思議の一つの『アカメ』という学校で飼っている鳥の力を使って、朝倉さんの周囲を鳥たちで見張らせて、ついに下駄箱に細工をしている堀田(ほった)というずっと前に朝倉さんに振られた不良系の男子を見つける。それで呪いの携帯や七不思議の一つの『花子さん』の力で堀田を精神的に怯えさせて夜に学校に呼び出し、主人公はお面を被って出て行く。堀田が殴りかかってきたところを、七不思議の一つ『霊界の吐息』というもので気絶させて、四階から地面(植木の上)に落下させる。これで一応、堀田も懲りたらしくストーカー行為は止まった。主人公は今日も中庭の朝倉さんを見守り、今度は友人と一緒にお弁当を食べれているのを見てほっとしたのだった。→夏の章。水泳大会があるので、高校はてんやわんや。だが水泳の授業が終わった後、三年B組のみんなの持ち物が盗まれて大騒ぎ。朝倉さんも四年前に事故で死んだ姉の形見のイヤリングが無くなっていないか、と心配するが、杞憂だった。黒板を見ると、七不思議の一つである『ポッケさん』という文字が彫られており、みんなは「「「その所為なのか……?」」」と思う。だけどアカメの力で主人公には犯人がわかった。朝倉さんと一緒に放課後残り、泉(いずみ)という水泳部期待のエースの男子を問い詰める。泉は「俺はこの高校の期待の星なんだぜ? 友達に頼めばアリバイも作ってもらえるし!」となかなか犯行を認めないが、「朝倉さんが、君が水泳部のロッカーから盗品を持ち出している動画を撮ってるよ」「何ぃ!?」「このデータを消して欲しかったら、俺と飛び込み勝負しろよ。水泳部のエースなんだから、楽勝だろ? だけど、君が負けたら自首しろよ」ということで、飛び込み勝負。主人公は七不思議の一つの、「数えていると数を間違える」『十三階段』の力を使って、泉を困惑させて楽々勝利。泉は教師に自首するが、謹慎処分で終わった。→秋の章。文化祭で盛り上がっている。主人公のクラスはバザー。買い出しを頼まれて、主人公がクラスに戻ってくると、「売上金の封筒が無くなった。全員のロッカーを見て回っている。お前のロッカーも見ていいか?」と言われて了承すると、何故かその封筒があった。窃盗容疑を掛けられるが、そこでアカメの視点で朝倉さんが理科室で堀田に襲われているところを見る。クラスメイトを振り切って理科室に行き、堀田に立ち向かうがパンチを鳩尾に喰らって霊界の吐息が出せない。そこで転がっていたシャボン玉液を使って、何十個も吹き出し、堀田に向けて飛ばす。そしてシャボン玉が弾けると、霊界の吐息が作用して堀田は気絶。売上金の件も、堀田の所為だった。堀田のことは今度こそ警察に突き出した。主人公は朝倉さんに告白。すると、「私も中崎くんのこと、好き」と言われて付き合うことに。→冬の章。受験勉強が忙しい主人公。でも朝倉さんが勉強を見てくれるので、悪い気分ではない。付き合って一ヶ月目の日は、雪が降っていた。二人でバスに乗ると、主人公は小さな紙袋を取り出す。「こ、これ、付き合って一ヶ月目の記念、っていうか――」「えっ! 嬉しい! 何かな……」朝倉さんが紙袋を開けるそのタイミングで、バスが横転事故に遭う。主人公は隣の朝倉さんに手を伸ばすも、その手は冷たかった。「彼女は……もう駄目じゃ」とテンコが言う。主人公は、テンコに「テンコ――俺を、永遠に学校の七不思議にしてくれ。朝倉さんとの思い出を残しておきたいんだ」と言って七不思議、『三年B組 中崎くん』になる。→冬の章2。朝倉さんはすでに推薦で大学が決まっていた。だけど、付き合っている中崎くんの表情が浮かない。なんで最近距離を取るのか、と訊くと、中崎くんは「信じられないかもしれないけど――俺は、この学校の七不思議なんだ。俺は四年前に七不思議になった。俺と付き合っていた君のお姉さん――朝倉咲紀(さき)さんが亡くなった時にね」と真実を告げる。そして、朝倉さん――いや、咲紀の妹の朝倉香穂(かほ)は、『あの時』諦めてしまった主人公に「お姉ちゃんは、あなたと出会えて幸せだった! 自分がいなくても、前に進んで欲しいと思ってる!」と告げて学校を卒業して行った。→春の章2。主人公は、病院のベッドで目覚めた。時間はちゃんと進んでいる。いままでのように、卒業式の深夜にリセットされて、何度も七不思議の『三年B組中崎くん』を繰り返していない。主人公は、四年前の事故で『唯一、寝たきりになった生存者』ということになっていた。ベッドサイドには、香穂の字で手紙があった。「嘘吐きの中崎くんへ――」から始まるそれは――。手紙を読み、リハビリを始めて歩けるレベルになり、街に散歩に出掛けるとスーツを着て大学の入学式に行く香穂の姿が。もちろん、卒業式の日にみんなの記憶はリセットされるので、主人公のことは覚えていない。君の姉の同級生だった、と言って少し話をして、「ありがとう」と告げる。そしてイヤリングの話題になり、「ああ、これお姉ちゃんの形見だったんですけど、卒業式の日に壊れちゃったんです」と言われた。主人公は唐突に理解する。自分が七不思議に組み込まれた時のように――咲紀の魂が篭ったイヤリングが、いままさに高校の七不思議になっているのだと。涙を溢れさせながら、主人公は香穂と別れて、『みんな』にいつか胸を張って会える日が来るだろうか、と思いながら香穂の乗ったバスを見送ったのだった。

 あー、いい話だった!!
 そうなんだよ……「夏の章」だけが、形見のイヤリングが出てくるから、香穂との思い出なんだよ! 香穂の友人の真子(まこ)も過去の思い出ではそこだけ出てくるし!
 春の章で「OBの青上(あおかみ)選手がオリンピックに出る!」ってことを描写されて、後々「青上選手が金メダルを獲った!」ってことも「オリンピック=四年間隔」ということを上手く使っていて、二回目に読んだ時は「ああ、これが伏線だったのか!!」と目からうろこ。

 本当にいい作品でした。星5つ★★★★★。超オススメです。みんなも買って読んで、この感動を共有しようぜぃ!!

 これで電撃大賞受賞作レビュー全部終わりー!! え、「C.S.T」……? さて、なんのことやら……(すっとぼけ)。
総評を出すと、
七不思議>>>王手>>>>>>>韻が織り成す〜>>ゼロから始まる〜=思春期〜>>>>>>>>>(超えられない壁)しげ子>豚骨ラーメンズ
……ってところですかね。七不思議と王手は、ぎりぎり七不思議の方の完成度が少しだけ高かったので。しげ子豚骨ラーメンズの作者は、筆を折った方がいいんじゃないの?(かなり真面目に)
追記:「思春期〜」は素で入れ忘れていました(笑)。

posted by mukudori at 20:40 | Comment(6) | TrackBack(1) | メディアワークス文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月14日

博多豚骨ラーメンズ/木崎 ちあき

 電撃文庫部門は終わったので、さあ行ってみよう! 電撃大賞、メディアワークス文庫部門だよ!
博多豚骨ラーメンズ (メディアワークス文庫)博多豚骨ラーメンズ (メディアワークス文庫)
木崎ちあき

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人口の3%が殺し屋の街、博多

 斉藤(さいとう)がようやく内定をもらった会社の裏の顔は殺人請負会社だった。宗方(むなかた)と麗子(れいこ)とイワノフは福岡市市長直属の殺し屋だった。林憲明(リン・シェンミン)は華九会(かきゅうかい)というヤクザお抱えの殺し屋だ。さっきも二人殺してきた。ジローはミサキという小学生とホセという拷問師を伴う復讐屋。重松(しげまつ)という刑事は、尊敬する上司が自殺に見せかけて殺されたので、探偵の馬場(ばば)に依頼をする。馬場はハッカーの榎田(えのきだ)に助力を頼む。殺し屋たちの中で、誰が生き残るのか――。第20回電撃大賞、大賞受賞作!!


 あっはっは! 作者、馬っっ鹿じゃねーの!!(キレ気味に)
なんだよ、「人口の3%が殺し屋の街、博多」って!
この「博多」が「福岡市全体」か、「博多区」のみかを表しているのかは知りませんが……仮に福岡市だとしたら、人口150万人(2013/12当時)だぞ? その3%だって? じゃあ4万5000人が殺し屋でちゅかー。なに? 作者(受賞当時24歳)はこんなに簡単な小学生レベルの計算も出来ないの? どう考えても、殺し屋があぶれるっちゅーねん。それとも、福岡市民を殺しまくって人口減らしたいの? 「福岡地元大好き!」って後書きで書いてるけど、作者は大した愛市民性をお持ちのようですね〜(^-^)
 推薦文は成田良悟先生です。
「『デュラララ!!では刺激が足りない!』そんな読者のみなさんにオススメの、熱々こってりな極上品です! この爽快な喉ごし、一度ハマったら抜け出せませんよ……! ※この作品は料理小説ではありません」
ハハハ、成田先生ったらご冗談を。つまらない作品だったら推薦文考えるのって大変ですよねー。

 ネタバレあらすじー。
 昔、甲子園にピッチャーとして出場したこともある(だが、バッターの頭部への死球で半身不随にさせてしまい、それ以来ボールを投げられなくなった)斉藤、東京の『殺人請負会社マーダー・インク』の仕事で失敗したので福岡に左遷される。女装好きな殺し屋の林は組長の張(じゃん)の依頼で組の金を持ち逃げした男女を殺す。宗方たち、「女を犯して殺さないと興奮しない」という市長の馬鹿息子の尻拭いのことを飲みながら愚痴る。ジローは猫殺しの男子高校生を、愛猫を殺された飼い主の依頼で拉致監禁拷問殺害。重松は自分の上司が、市長とヤクザの張が密会している現場を押さえようとしたので殺された真相を暴くために、馬場に依頼する。→張が「この男が最近こそこそ嗅ぎ回っているから殺してこい」と馬場殺しを林に命令するが、報酬をピンハネされることの多さで反抗的になった林は馬場のところに行くも、「むかつくから、逆にお前を守ってやるよ」と言う。馬場も林の借金を代わりに払ってやろうか、と提案する。馬鹿息子、せっかく宗方たちが華九会の伝手で取り寄せた貧乏な東南アジア系の娘を犯して殺す。前科もあり、これで3人目だった。これまでの2人は馬鹿息子が路上に死体を放置していたので、連続強姦殺人事件として報道もされている。それらの罪を、酔っぱらった斉藤に被せることに。→斉藤、ホテルで目覚めると女の子の死体が転がっていたので驚きつつも逃げ出す。以前にジローの復讐屋の仕事のターゲットとして間違われていたことで、謝られて名刺をもらっていたのでジローのバーに逃げ込み、マーダー・インクの仕事で稼いだ金で「自分を嵌めたやつに復讐して欲しい!」と依頼する。ニュースを見た林が、今回殺されたのは台湾で母と一緒に仕送りを待っているはずの自分の妹だと気付き、張に電話すると「お前は大人を舐め過ぎた。これまでの月100万の仕送りも全部俺の懐に入ってるんだよ。ついでにとっくにお前の母親は五年前に病気で死んでるからな」と言われたのでブチギレて組の事務所に特攻。張を殺そうとするが、張は市長の伝手でイワノフを事前に借りていて、林は絞め殺されそうになる。その間に張は逃亡。だが林はナイフ型のピストルで隙を突いてイワノフを殺した。そこに馬場が追いかけてきて、事務所にまた匿う。→馬場が佐伯(さえき)という表は美容外科医の闇医者に行くと、そこでジローと会ってちょうど高校生の生首死体を持っていたのでそれを買い取る。イワノフの持っていた携帯は榎田に預けて、相手の情報が引き出せないか探ってもらっていたので、そこのGPS記録で榎田の場所が宗方たちに割れて、榎田は金を要求して宗方たちに馬場たちの情報を寄越す。それで宗方たちは、『伝説の殺し屋殺し屋(ころしやごろしや)であるお面を被った、にわか侍』に依頼することにした。→林は「妹を犯して殺した男」も復讐対象だったので、女装して「取り引きされた女」ということでスーツケースに詰められると渡されて、外に出されるとそこには張と宗方たちが。にわか侍もいる。殴られて馬場に助けを求めると、にわか侍が「外をうろうろしていたので、殺しておきました」と馬場の生首を投げてくる。絶望する林。だが次の瞬間――張がにわか侍によって首を飛ばされていた。宗方も呆気なく殺される。仮面を外して林を助けたにわか侍の正体は――馬場だった。生首はジローから買った後、佐伯に自分に似るように整形してもらっていたのだった。そのころ、馬鹿息子とそれを護衛している麗子の元にはジローたちが。やすやすと二人を捕まえる。→エピローグ。張たちの殺人は全部麗子に被せた。馬鹿息子は殺す前に、「ごめんなさい、3人もの女性を強姦して殺したのは、福岡市長の息子の僕です」と言わせてビデオカメラに撮って、榎田にデータを渡してそれを全国波のテレビに強制的に流す。それで市長は失脚し、斉藤も自由の身になるが、一応整形する。その後は心機一転、とばかりに久しぶりにボールを握って、いろんなところに「ピッチャー急募!」のチラシを貼っている草野球チームの『博多豚骨ラーメンズ』に加入した。するとそこには見慣れた顔がぞろぞろと。馬場、林、重松、ジロー……。そして練習試合で登板するが、相手のバッターから強烈なピッチャー返しを頭にもろに喰らった。霞んで行く景色から、斉藤は「あのバッターの顔、どこか昔に見たことあるような……」と思っていた。

 うっわ、後味悪っっ!! どこが「爽快な喉ごし」だよ、成田センセー。嘘表記は良くないですよー。ああ、電撃お得意のステマか!
 さーて、みなさんご期待の突っ込みタイム(処刑時間)だよー。
 まず、市長直属の殺し屋がなんで大衆的な飲み屋で、隠れもせずに仕事の話をするの? プロ意識無さすぎだろ……。
 そんでイワノフを殺した林がイワノフの携帯に出た時、「(なんだ? 『着信者:M』って……。この殺し屋の仲間か?)……もしもし」「俺だ。終わったか?」「……ああ、終わったよ」「……そうか。よくやった、吉田」「まあな」「――お前は誰だ? この携帯の持ち主は『吉田』なんて名前ではないが」……って! 飲み会開くぐらいの仲間なら、第一声で気付けよ! イワノフはマッチョマンで、林は女装姿でナンパされるぐらい細いんだから、声帯全然違うはずだろ!?
 林も、序盤の人殺しで「組から盗んだ金はあと400万ある! それを全部アンタにやるから、見逃してくれ!」「駄目だって。俺はプロの殺し屋だからさ」って「プロ意識高い俺、カッケー!」風に殺しますけど、ならなんで後で馬場に「君の借金代わりに払ってやるけん、俺に付かん? いくら要るん?」「……500万」「ほい。重松さんからの依頼の前金があって良かったわー」って簡単に懐柔されるんなら、全然プロじゃないよ? 馬鹿なの? アホなの、お前? それなら400万もらっておいて、男を消費者金融や闇金回らせてあと100万円都合させるか、自分で真っ当に働いたらどうなの?
 それに宗方の片目が無いことを、「昔、俺がシリアルキラーなターゲットをライフルでビルの屋上から狙っていた時、俺が撃つ前にターゲットの男の首が変な仮面を付けた日本刀持ちのやつに飛ばされてな。……ああそうだ、そいつが『にわか侍』だった。どうしたもんかとライフルのスコープで眺めていると、いきなり目にガラスの破片が飛び込んできた。にわか侍のやつが、窓から脇差をこっちに投げてきたんだ。それで失明した」とありますが……にわか侍の筋力、どんだけだよ(真顔)。あのなあ、作者。本物の脇差って結構重いんだぞ? 宗方がライフルを構えていたビルの屋上とにわか侍が現れたビルの距離がどれだけあったのか知りませんが(というか、必要な描写なのに書いてない)、ライフルで狙うってことは少なくとも殺しの足が付かないように数百メートル規模だよね? その距離で相手の殺気に気付いて脇差ブン投げて直撃させるとか、にわか侍どんだけー。それとも宗方のスナイパースキルがあまりに低いから、隣のビルから(それでもビル同士の間隔は十メートルぐらいはあるよね?)狙ってたんですか? ライフルで?(呆れ) ……あのさあ、作者。せめてwikiレベルでいいから下調べをしてくれ。殺し屋の話を書くなら、最低でもゴルゴ13を一回でいいから読んでくれ。頼むから。
 そして、ホセの「女装してたって俺にはわかるんだ。ゲイだからな。見た瞬間に股間がうずいたぜとか、ジローが馬鹿息子を殺す前に「あなたに殺された女性たちの気持ちを復讐するためにも似たような目に遭ってもらうわ。安心して! バリタチの絶倫を呼んでるから!」とかいう台詞回しはやめてもらえませんかねえ……。読んでて背筋が悪寒で震えましたよ。いくら作者が同時期にビーズログ文庫でも、ニアホモ(説明:少女向け小説で匂わせる程度のBLっぽさを入れた作風のこと)的なものを受賞して出してるからって……。あ、ちなみにこの作品も買ってますのでレビューをご期待ください(苦笑)。ようやく私のブログカテゴリの「ビーズログ文庫」が火を吹くぜ!w
 あと、福岡県警仕事しろ。なんで強姦殺人(馬鹿息子のことなので、おそらく生でヤって中出ししていると思われる)の被害者に残された体液のDNA鑑定しないの? それすれば、ホテルに残った髪の毛やらで斉藤は関係ないってわかるよね? あと、監視カメラも確認しろよ! 榎田がちょっとハッキングするぐらいで見れるんだから、斉藤のホテルの部屋に、最初は麗子と泥酔した斉藤が一緒に、次に宗方がやけにデカくて人が一人ぐらい入れそうなスーツケースを持って入って、麗子と宗方(軽くなったスーツケース所持)が二人で出てくるのバッチリ撮られてるじゃん……。おかしいと思えよ。
 そんで宗方たちも、どうせまた変態息子が「ヤっちゃって殺しちゃった☆」するのわかってるんだから、その場しのぎで斉藤に罪を被せても、後で拘置所か刑務所に入れられていて斉藤のアリバイ完璧な時に同じ手口で強姦殺人があったら、普通マスコミが「冤罪だ!」って騒ぐよね? そこまで想定してないの? 作者馬鹿なの?
 で、なんで声で気付かないの?(二度目) にわか侍が「外をうろついていましたので殺しておきました」って言った瞬間に気付けよ! 林は本気で馬鹿か! せめてにわか侍を「筆記会話のみしか受け付けない」、とかいうキャラにしておけば良かったのに……。
 そしてもって、説明描写がくどい。「馬場の両腕を左右の膝で押さえつけ、素早く何かを取り出した。ナイフのような形をしたものだった。次いで、首筋がひやりとした。刃が、喉に当てられている。身動きが取れない。」とかさー、もっと簡潔にして欲しい。電撃大賞の下読み、どうなってんだ。
 最後に、明太子好きとしては許せないことが。林に馬場が「『ふくや』の無着色明太子買ってきて〜」ってお使いに出して、なんで林は「中洲本店」に行かずに博多駅に行って「明太子なら福岡の土産物だからここにあるだろ」ってなるの!? いや、あるけどさ! でも三年間も華九会に所属して博多で暮らしていて、なんで知らないの? 一流の殺し屋は世間のいろんなことに通じているんだよ……。「ゴルゴ13になれ」、とまでは言わない……。だが、「暗殺教室」レベルのことは知っていて欲しかったなあ。日本で暮らしてて女装だけに詳しくなってんじゃねえよ。言っとくけど、お前挿絵では胸にパット入れてないように見えるから、全然女に見えないぞ?
 あ、もう一つ。にわか侍の話が初めて出た時、すぐに「どうせ表紙で一番目立ってて、作者の萌えを詰め込んだようなこいつだろうな……」と直感でわかりました。伏線張るの下手過ぎる

 なんというか……総評をすると、作者の根底の子供っぽさと性格の適当さが反映されているような作品でした……。これで24歳? へえ……(虚ろな目)。
もちろん評定は星1つ★☆☆☆☆。超地雷です。みんなは買わない方がいいよ!

追記:この記事ね……途中までは書いてたんだけど、一度エラーで消えちゃったよ……。いま、半泣きで書いてます……。「ぜかまし」の時もありましたけど、第20回電撃大賞の大賞受賞作を酷評すると、呪われるのかな? わあ、KADOKAWAグループって怖ーい! ははは……。
――とか書いてると! さっき(3/14 2:07)結構大きい地震が来たよー!((((゜Д゜;))))  薬箱が棚から落ちた! 全国で誰も被害が無いといいんですけど……。

posted by mukudori at 03:58 | Comment(10) | TrackBack(0) | メディアワークス文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月17日

サマー・ランサー/天沢 夏月

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天沢 夏月

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少年よ、きらきらせよ!

 大野天智(おおの てんじ)――剣道八段の剣聖である祖父を持ち、剣道界では有名な麒麟児である彼は――いま、剣道に夢中になれないでいた。大好きで尊敬する祖父が亡くなったからだ。そして新しい高校に来て出会ったのは――槍術(そうじゅつ)!? 羽山(はやま)という少女に誘われ、少年は今度は剣ではなく、槍を握る――。第19回電撃大賞、選考委員奨励賞受賞作!

 帯のコメントは綾崎隼先生です。
「『誰にも才能なんてないんだよ。頑張ったやつが天才なんだよ』彼女の言葉に吸い込まれ、気付けば最後まで一気読みでした。何を恐れているのかも分からないまま、痛くて、寂しくて、自分自身にさえ戸惑うしかない十代。それでも、支えてくれる仲間の声だけは、確かなのだと思わずにはいられない。そんな何処かまでも真っ直ぐで。ブリリアントな青春小説でした」
――ときたもんだ! 期待値大だね!
 さあ、さっそく読んでみよう――……と思ったら、おい、クソ小説じゃねえかこれ。
まったく、『お茶が沸くまで台所で待っている間の読書タイム』を無駄に費やした、苦痛の一週間でしたよ!

 ネタバレあらすじー。
 主人公の祖父が亡くなり、主人公は剣を落とす。「じいちゃん、俺、何を目指せばいいのかわかんないよ……」とのこと。そして両親の転勤に付き添って、新しい高校に入ると、「槍術部」というのを目にする。強引に羽山という同じ一年生の女子になし崩し的に体験入部させられる。→剣道部がその筋では有名な主人公を探しにやってくる。ついでに槍術部と体育館の使用状況についての意見が反り合わず、主人公と剣道部のエースとで決闘をおこなうことに。→本番当日。主人公は先輩から教わっていた「一回切りのフェイント技」を使うが見切られる。そして一本取られるが、二本目は主人公が「槍の道筋」を見切れたことでやり返す。そして主人公が防具の暑さに気絶したことで三本目の勝負はお預けになり、体育館使用状況も剣道部への加入もなあなあになる。→槍術部で過ごしていて、主人公もそろそろ自分の道具を買った方がいい、と言われるので休みの日に遠出するが、そこの槍術屋の店主は「お前にはまだ自分の槍が見えておらん」という頑固親父なので売ってもらえず。その後、槍術部の全国大会――通称「グングニル」を目指すために練習をおこないたいので、祖父と交流のあった剣道道場の師範に主人公が話を付けて使わせてもらえることに。だがその練習中、主人公は祖父の幻影が見え、自分が何をしたいのか、どうして槍を握っているのか、それは「剣道からの逃げ」じゃないのか――と困惑状態に陥る。そこに話し掛けてきた羽山に、つい木槍を突き出して当ててしまう。羽山は病院に運ばれ、肋骨の強打、という重傷。グングニルには出場出来ないとのこと。それ以来、主人公は無気力になり、グングニルの開催の日も家でゴロゴロしているが、部活のみんなからメールが届く。それに主人公は弾かれるように飛び出し、奈良県への新幹線に乗った。→無事、会場に辿り着く主人公。個人戦と団体戦にエントリーされているというが、それは女子の先輩が面を被って男装してエントリーさせてくれていたのだ。そして始まる団体戦、主人公は時間の都合から大将だった。相手の高校の大将は全国ベスト32の人だという。そこを主人公は自分の槍の赴くままに走らせて、辛勝。二回戦も勝ち抜くが、三回戦で負ける。個人戦も負ける。だが主人公には、羽山からの手作りの賞状が渡される。それはいままで剣道でもらったどの賞状よりも輝いて見えたのだった――。

 ……さてさて、最後をちょっと綺麗に締めておいて……
「サマー・ランサー」のここがひどい! 7連発!
・なんで主人公が祖父が亡くなったぐらいで剣道を放り出してしまうのかわからない。15年間頑張ってきたんだろ? 私がじいちゃんなら叱ってますよ。「この大馬鹿者が!」って。じいちゃんもなんで近くにいた、可愛い孫のはずの主人公がこんなに鬱々とストレス溜めるまで放っておいたのかわからない。放任主義か?
・剣道部との試合でなんで下っ端の主人公が体育館の使用権を賭けて剣道部とのエースと試合をやらされるの? そういうのは部長が責任持ってやれよ。
・羽山(表紙の女子ヒロイン)にギプスレべルの怪我をさせたのに、引きこもってばかりで羽山のご両親への謝罪は無しかい。私が羽山の親なら、可愛い娘に公式試合でもないのに男子に怪我させられたのに対面しての謝罪も無いのならば、主人公の家か学校に直談判して、主人公にかなりのレベルの処分を求めますね。停学ぐらいかなー? それが無くても、学校か顧問はこの事故を把握してないのか? むしろ、スポーツもの(運動部もの)でここの流れが無いのがおかしい。なのでおそらくその流れを入れたらば主人公が最後に大会に出ることが難しくなるので、作者(当時22歳)が『逃げ』に入ったのだと思いましたね。
全国大会の通称がダサい。『グングニル』(キリッ)。えーっと、まあ高校生でも厨二加減はまだ欲しいのかもしれませんが、日本にも名槍はある訳で。有名どころでは『蜻蛉切(とんぼきり)』とかさー。えっ、『トンボ』はダサいって!? なら『天下三槍大会』でもいいよ……。
全国大会で男装して身代わりにエントリーした女先輩がばれなかったのがおかしい。その先輩、「身長は低い」って作中に書いてあるし、口絵での主人公との身長差が少なくとも20cm以上はあるように見える。普通なら「君、面を取りなさい」とか面通しするだろ。じゃなきゃ身代わり作戦やりまくりじゃねえか。
・主人公が剣道時代に培ってきた技術が全く役に立っていない。
・最後の槍術屋の親父、全国大会を終えた主人公の顔を見ただけで「ん」と勝手に選んだ槍を渡してくるとか、読心術使いなの?

 この小説で褒めるべき点は三点。
「槍道部」という架空の部活を生み出したこと。そして庭さんのイラスト&槍術屋のオヤジのツンデレ……以上。
そんな訳で、星1つ★☆☆☆☆だぜ! プチ地雷だよ!

追記……いま改めて第19回電撃大賞の選評ページを見たら、佐藤竜雄氏が
「〜〜とはいえ、爺ちゃんが元凶なんじゃと思わせてしまう構成はいささか…剣道が強かったという主人公の悩みがいまいち伝わらない。槍を持ち上げるために剣道を下げるのはどうかと。あくまで逃げているようにしか見えない。」
あー、これですわ。
「剣道で培ってきたはずの主人公の精神(メンタル)が、今年の三月に祖父が死んだから(29P)弱くなってきた。まあでも実際のところは、主人公は小学生のころは剣道が強かったけど、中学校の中盤ぐらいからは勝てなくなってきたから嫌気が差してきて、もう俺には『剣の輝跡(キセキ)』が見えないんじゃないか……と勝手に断定したこと」からの羽山の「槍術ってすごいんだよ! 剣道やらないんなら、一緒にやろうよ! 楽しいよ! 私が怪我しても、別にみんな君を責めないし! でもさ、一度だけでも大会に出てくれたら、楽しさがわかるって!」
……という、主人公の首を真綿で絞めるような周囲の環境がなんとも。
 そりゃ転校生な主人公の家庭環境は羽山たちにはわからないかもしれませんが、剣道部がアプローチしてきたところでなんとなくわかっただろ? そこから主人公の「嫌々」「なんでもかんでもやりたくないんだ」という視点ばかりで羽山たちが主人公の祖父が最近亡くなったことを知っての気遣いっぷりがあまり見られなかった。
主人公には、「ちょっと不運な境遇&お前は自分でも矯正するのが難しい性格に産まれたんだなー……」としか言えませんね。いっそのこと、父親と同じように「勝てなくなったから、もう剣道辞めて受験勉強に専心するよ。ごめんね、じいちゃん。曾孫の顔はなるべく早く見せてあげたいし産まれたら剣道も勧めるけど、他の親戚筋の子にも当たってみなよ」とでも簡単に自分の才能に見切りを付けて切り替えが出来てればねえ……。
「天才が凡才になって堕落気味に」「ヒロインに出会って違うもの(部活など)にも出会う」「そこでも意外な才能があって全国大会優勝クラスまでに!」……まあ、3つ目までやったら「盛りすぎだろwww」となりますが、この話はほとんどのルートが王道なんですよ。だから私にとって食傷気味な話であり、主人公にとって都合が良過ぎる展開だと感じたので、星1つ★☆☆☆☆にしたのです。

中学生になって自分の剣道の才能(輝き)が見えなくなったなら、近くにいる祖父に教えを乞え。
別に恥ずかしくない。
目の中に入れても痛くないぐらいにお前を可愛がっている、血の繋がった男だ。
じいちゃんの死に際までしがみつけよ、大野天智。

posted by mukudori at 19:42 | Comment(3) | TrackBack(0) | メディアワークス文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月04日

きじかくしの庭/桜井 美奈

きじかくしの庭 (メディアワークス文庫)きじかくしの庭 (メディアワークス文庫)
桜井 美奈

アスキーメディアワークス 2013-02-23
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アスパラガスとの三年間

 高校教師、田路(たじ)は生徒の悩みを聞きつつ、恋人の香織のことを考えていた。生徒たちは、恋愛、友情、家庭……いろいろな悩みを相談する。きじかくしはそれを聞きながら育っていた――。第19回電撃大賞「大賞」を受賞しながらもメディアワークス文庫で出版されるという異例の新人作!

 あ、最初にネタバレしておくと「きじかくし」=「アスパラガス」です。
けど、誤字があって「オランダキジカクシ」が「オラダンキジカクシ」となっている箇所には吹きましたw
 推薦文はビブリア古書堂の事件手帖ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫) [文庫] / 三上 延 (著); アスキーメディアワークス (刊)ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常 (メディアワークス文庫) [文庫] / 三上 延 (著); アスキー・メディアワークス (刊)ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ (メディアワークス文庫) [文庫] / 三上 延 (著); アスキー・メディアワークス (刊)ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~ (メディアワークス文庫) [文庫] / 三上延 (著); アスキー・メディアワークス (刊)の三上延先生です。
「植物が育っていくような、ゆったりした力強い物語でした。きっと読んだ人に豊かな実りをもたらすはずです。」
……っておい。
超つまらんのですが……。

 ネタバレあらすじー。
 高校生の亜由(あゆ)は彼氏に振られ、その彼氏がさっそく新しい女を作ったことでいじけていた。そこを田路に見つかり、中庭の花壇で何かを育てることを決意。結果、彼氏の大嫌いだったアスパラガスを「復讐」として埋めて、亜由は卒業して行った。→亜由が放置して行った花壇の世話は田路がやっている。田路はこのころ、香織という大学時代を一緒した女性と付き合っていたが、彼女の奔放さ故に別れる。そこに仲良しな千春(ちはる)と舞(まい)がやってくる。だが舞が千春との付き合いを優先せず、アルバイトをしていることがばれて、二人の仲は険悪に。しかし、そのバイトが家計のためだということが判明して、仲直り。田路は新しい女性とも付き合ってみるが、やはり香織のことが忘れられず。→喫煙の所為で留年し、クラスでも学校でも浮いた存在である祥子(しょうこ)は田路に喫煙現場を見つかり、不問にする代わりにアスパラガスの世話を命じられる。だがなんのかんの言いながらも、祥子は世話を楽しんでいた。文化祭でペンキが無くなった事件では、義理の父親に頼むと父親との不和が解消し、大学も合格してハッピー! 田路も香織と結婚出来て良かったね!→一度植えたアスパラガスが採れるのは大体六年。そして三年後、この「きじかくしの庭」に関わった人間たちが集まる。あの青春時代、この庭で私たちは何を思ったのだろうか――。

 まったく心に残らない! 響かない! 作者が何を読者に残したいのかがわからない! 設定が後出しジャンケン!
とにかくそれに尽きますね。審査員の高評価も怪しいところです。
 まあ、帯文がちょっと疲れたアラサーたちへ。心を癒すこの一冊」とあるので私がターゲットではなかったからかもしれませんが……。

 そんなちょっと(読むのに)疲れたmukudoriお兄さん&お姉さんからは作者先生に星1つ★☆☆☆☆を贈呈いたします。地雷だよ!

posted by mukudori at 17:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | メディアワークス文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月20日

[映]アムリタ/野崎 まど

[映]アムリタ (メディアワークス文庫 の 1-1)[映]アムリタ (メディアワークス文庫 の 1-1)
野崎 まど 森井 しづき

アスキー・メディアワークス 2009-12-16
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 その映画は人を殺す

 僕、二見(ふたみ)は芸大の役者コースに進んでいるただの男だ。しかし、天才と名高い最原最早(さいはら もはや)が監督をするという映画製作に参加させられる。まず渡されてきた絵コンテ。それに僕は、なんと56時間も没頭してしまっていたのだった――。第16回メディアワークス賞受賞作!


 ……これはすごい作品だ
なんと、読んだのに頭の隅からその作品が消えて行き、何度も繰り返し読んでしまう(良い意味? で)。
まさにこの最早が作りたかった、「月の海」という作品。
まさに「アムリタ」(仏教で『甘い蜜の麻薬』のこと)。

 ネタバレあらすじー。
 主人公、最早が監督と役者を演じる自主制作映画、「月の海」に先輩でカメラマンの画素(かくそ)さんから誘われる。そして最早が描いたという絵コンテを渡されると、なんと56時間もぶっ通しで読んでしまう。それで映画への出演を承諾。→映画の制作は順調。だが途中でスタッフから「この映画のシナリオは最早の元恋人で故人の定本が書いた」と教えられる。そして高校時には美術展で入選、大学入試では一芸入試で一本の映画を送ってきて楽々スルー。現在は映画の音楽も自分のバイオリンで弾きこなす……などの多彩な才能を持っている最早のことを、「一本の映画で人を殺せると思うか? 俺は定本はそれで死んだんじゃないかと思っている。彼女は魔女だよ」と評する人も。→映画、クランクアップ。風邪を引いた最早のことを見舞いに行くと、そこには「月の海」の絵コンテの隣に「アムリタ」という絵コンテが。見てみると、どうやら「月の海」のプロット版らしい。これも数ページ見るだけでとてつもない吸引力に襲われた。→映画が仕上がったのに最早が失踪。そこに医大の研究員だという篠目(しのめ)という女子が、「最原最早の映画を研究しているので、『月の海』のデータが欲しい。彼女の映画は、見た者にとてつもない心理的影響を与えるものだ」と言ってくる。だがデータを普通に渡したりするのもはばかられるので、「最早が一芸入試の時に使った映画のデータと引き換えなら」と交換条件を出す主人公。そしてそれを見せられると、大したことのない映像の羅列だと思っていたのに、気付けば滂沱の涙を流していた。篠目によれば、「この映画はとある2カットだけで見る者の心理に働きかけている。だが、その2カットだけでは一芸入試にならないと思ったので他の意味のないカットも撮って映画の体裁にしたのだろう」ということだった。→主人公、最早にメールをして「君の部屋の絵コンテを使って『アムリタ』が出来た。上映会を始めるので来て欲しい」と送る。そこに現れる最早。主人公はこう推理した。「『月の海』のシナリオは定本の脚本じゃない。最早のものだ。『月の海』の前に『アムリタ』が出来たというのも間違いで、『アムリタ』のカットを撮りたいがために他のシーンを加えた『月の海』という映画を撮るという体裁にした。最早の映画は、見た者の人格すらも変えてしまう効果を持っている。たとえば『アムリタ』を見た者を――君の恋人であった『定本』に変えるような」……と。そして主人公は完成した「アムリタ」を流そうとした。最早のために、自分が定本となることもいとわない。だが、カウントダウンの直前で映画の上映は最早に止められる。「その表情、いままででずっと良いですよ、二見さん」と。そして二人は恋人同士になった。→初デートで映画を見に行くことに。しかしレイトショー、最早がこないので先に映画館に入っていることに。映画の前のCMが始まっていた時、最早がやっとやって来た。「二見さん、私とても嬉しいです。私は定本さんとお付き合いを初めて、なんのドラマもないうちに定本さんが死んでしまった。だから私は彼に似ている人に『アムリタ』を見せた。その人は面白いぐらいに定本さんになってくれた。――守ろうとしていた私に、もう自分自身が殺されていると知った時のその顔、それが見たかったんです。変装はしたことがなかったんですけど、私の医大生姿は似合ってましたか? あそこで見せた一芸入試用の映画に、あなたが『月の海』から『アムリタ』を作ってくれるものを詰め込んでいたんですよ」と、最早はとんでもない告白をする。「二見さん……いえ、定本さん? 知っていましたか、この映画館はレイトショーの時は貸し切り上映が出来るんですよ。これから上映される映画は、あなたをまた別の誰かに変えるものです。……忘れて下さい、この数日間を」と。映画はもう始まろうとしている。番宣も見てしまった主人公は、とっくに最早の術中にハマっていたのだった。でも、何度でも、この面白い映画が見れるなら――。

 終わりです。最後の余韻が素晴らしかったですね。
 あと、この作者は「天才」を書くのが上手過ぎる。頭の中では何度も「映画の音楽のためにプロ並みにバイオリンを弾く最早」の姿が思い浮かんできます。
 だが、篠目が変装した最早だって主人公気付けよ! 眼鏡を付けたぐらいで騙されんな! もっと声とか体格とかヒントあんだろ!?

 みなさんも最後は主人公の「そう、この映画はきっと最高に面白いに違いないのだ」に共感してもらえることでしょう。でもちょっと話がこんがらがってわかりづらいので星4つ★★★★☆。

posted by mukudori at 18:35 | Comment(0) | TrackBack(0) | メディアワークス文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月17日

空の彼方01巻/菱田 愛日

空の彼方 (メディアワークス文庫)空の彼方 (メディアワークス文庫)
菱田 愛日

アスキーメディアワークス 2010-01-25
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空の果てまで、連れて行って

 裏通りの目立たないところにある防具屋「シャイニーテラス」は、一人の美しい少女が切り盛りしている。その名はソラ。太陽の光を浴びれない彼女の周りには、いろんなギルドや騎士団の人間がやって来て旅の話を聞かせてくれる。今日もまた、新しいお客がやってきた。第16回電撃大賞奨励賞受賞作!


 うわーん!
舐めてたよー。正直舐めてたよー。ごめんなさーい!!
著者インタビューで、こんなちゃらちゃらしたスイーツ(笑)が書くものなんてたかが知れてんだろ? ……とか思っててごめんなさい!(平伏)
予想以上にいい話でした! 少なくとも私の創作意欲を120%煽るぐらいには!
菱田先生、ホントマジすみませんでした。食わず嫌いはいけないね!

 ネタバレあらすじー。
 昔の話。防具屋の娘、ソラが幼なじみの少年に自分の手作り防具を送る。しかしその少年は出て行ったきり、帰ってこなかった。→現在の話。王都にあるギルド、「スカイワード」には元貴族で現在傭兵の少年、アルフォンスがいた。アルフォンスが最初の依頼を達成するために傭兵の先輩、デュランに連れられてやってきた防具屋、「シャイニーテラス」でソラという美しい少女と合う。ソラは防具を売ってくれるのだが、条件があった。一つは「この王都に絶対帰ってくること。もし『死んでも帰って来たい場所』を紙に書いてソラに預けておくこと」一つは「この店の防具を着ている人がいたら助けてあげること。この店の防具を着ている死体を見たら、防具だけでも持って帰って来てくれること」もう一つは「太陽の光を浴びれない自分の代わりに、旅の話を聞かせてくれること」――だった。その条件を飲み、アルフォンスは防具を売ってもらう。→アルフォンスの最初の依頼は「貴族の子女を他の街へ送り届けること」というもの。自由を奪われた10歳の大人しい令嬢に、アルフォンスはソラの店で買った(というより押し付けられた)手鏡を使って、馬車の中の小さな窓から少しの間だけど、自由な街並みを見せてあげられた。→時を同じくして、トリトスという狩猟者の男の弟が「反政府組織に武器を密売していた」という疑いを掛けられて、絞首刑に掛けられるという。トリトスはその件で自分は無罪だったが、弟を殺したこの王都に居たくないという理由で街を出る前にソラに挨拶しにきた。→アルフォンスが最初の依頼を達成して帰ってきたところ、デュランが新たな依頼で腕のいい鍛冶職人をとある街から王都の教会まで運ぶ任務に就いていた。しかし、途中の村でレジスタンスの一味と遭遇して人質にされているという。→マリアベルという王都軍の女性兵士がソラの店を訪ねてくる。マリアベルはこれから、小さな村のレジスタンス討伐に行くという。→トリトス、旅の途中で魔獣に追いかけられているデュランを見つける。それを助けると、デュランはとある地下道の抜け道に行き、「仲間がいずれ来てくれて、この扉を向こうから一緒に開けてくれるから、ここから動く訳にはいかない」と言って梃子でも動かない。仕方なしに、近くでキャンプを張っている王都軍に助けを求める。するとそこにはトリトスと顔見知りのマリアベルがいて、話を聞いて軍医を出してくれた。また、「村との抜け道」があると聞いて、レジスタンス討伐の作戦に使うことにする。→同時に、アルフォンスたちギルドメンバーもデュランたちを助けようと村の近くにいた。そこを軍の偵察兵に見つかり、話し合うとお互いの意見の一致で作戦を一緒することにする。アルフォンスが村の警備の隙を突いて村に忍び込む。レジスタンスに疑われたりもするが、そこは村人の勘で助けてもらえる。教会に地下道への入り口と昔この村を助けてくれた勇者の鎧がある、と伝えられ、アルフォンスは一人で教会に忍び込む。教会の地下道には確かに鎧があった。まるでいまにも動き出しそうな……。その鎧を着て、アルフォンスは地下道を進む。→そして出口の向こう側のデュランと合流し、地下道への入り口を開いた。結果、そこから村に侵入出来た王都軍は村人の犠牲者を出すことなく、任務を達成出来た。デュランたちの依頼人の鍛冶職人も一緒に。→無事に王都に帰ってきたアルフォンスは、ソラに村の教会に飾ってあった鎧を返す。その鎧の持ち主は――昔、あの村が魔獣に襲われていたところを自分の命と引き換えに助けてくれた勇者だという話を長老から聞いていた。それをソラに話す。そう、その鎧の持ち主は、冒頭でソラが初めて作った鎧を着て行った幼なじみ――シャインだった。→ソラはアルフォンスを店の奥に案内する。太陽の有害物質をガラスに細工した魔法で取り除いているそこは、唯一ソラが日光の恩恵を与えてもらえる場所だった。そこに、ソラはシャインの防具を置いた。希望の無い道でも、見方を変えることが出来ること。闇の中にも、一条の光が必ずあること。それを信じて、ソラは今日も防具を作るのだった。

 ハッピーエンド!!
今回ばかりは私の負けです。手放しで褒めましょう。菱田先生、アンタはすごい!
ラスト5ページぐらいからがたまりませんね。
でもこれ、なんでMW文庫から出るのかなー?
個人的には電撃文庫からでも良かったと思います。
今回は文句なしの星5つ★★★★★です。
ただし「夜のちょうちょと同居計画!」には手を出す気がしない(笑)。

posted by mukudori at 23:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | メディアワークス文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする