2015年08月19日

ケモノガリ 6/東出 祐一郎

ケモノガリ 6 (ガガガ文庫)ケモノガリ 6 (ガガガ文庫)
東出 祐一郎 品川 宏樹

小学館 2013-05-17
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全てが終わった時、果たして僕は僕なのだろうか。

 バチカンでの十二使徒ゲームが終わった後、楼樹たちは南米――ブラジル――へと渡っていた。シャーリーが「所属するCIAの調べでは、その地域に凄腕のクラッカーがいるみたい。その腕を借りられたら、もっと速くクラブを潰せるでしょうね」と言ってきたのだ。そうして楼樹がブラジルに偶然いた、クラブ会員で子供たちを生きたまま解体するのが趣味のイカレた医師を殺すと、手術台の上に拘束されてギリギリ助けられた少女――シャテア。スラム街で弟と一緒に暮らしていた彼女こそが、拾ったパソコンで電脳世界をジャックして遊んでいた、シャーリーの言っていた『クラッカー』だったのだった――。最終巻まであと3巻! 


 唸った!
東出先生の文章ではないと思うのですが、「これは上手い!」と思わず唸ったのが、今巻の帯の表に書かれていた「全てが終わった時〜」のコピーですよ!!
楼樹の悲痛な感情も感じられて、だんだんと楼樹の心が病んで止まってきているような風に思わされる!
こういうキャッチコピーって出版社の編集さんが考えて書く……と聞いたこともあるような? だとしたら、編集さんも文才……というか、文章センスがありますよね。すごい!

 ネタバレあらすじー。
 聖父(ファーザー)の一人である、《悲哀(グリーフ)》のサイクロプス・ジャック。アルカトルズ刑務所っぽいところに幽閉されている彼の知能はかなり低いが、戦闘能力は世界一と言ってもいいほどのものでアストライアのことを嫌っている。そしてアストライアの方もジャックを嫌っているが面会に行き、「ハワイで聖霊会議を開くので、君は釈放だ。みんなが揃うよ」と言われ、鎖などを自力で引きちぎって看守や他の囚人たちも皆殺しにして、その刑務所から出て行く。→楼樹、ブラジルでシャテアを救い、そこでシャテアが電脳世界でシャーリーが言うところの『パスズ』という、その地域の悪霊の名を冠した凄腕クラッカーだと知る。ちなみにシャテアはそこで助けてくれた楼樹に惚れて、「あたし、インターネットのクラッキングは得意だから、それでマフィアのやつらに協力してたの。だからそのお陰で、いままで身体だけは健康無事に弟と一緒に暮らせてたわ。つーまーりー……」「ちょっとー? 楼樹にはもう好きな女の子がいるのよ?」「うるさいなー、オ・バ・サ・ン!」「なっ!? 私はまだ二十代よ!!」と、色っぽさはあまり無いが、処女であるというモーションを掛けてくる。以降、シャーリーとはあんまり仲が良くない。ついでに、シャテアはマフィアの元でクラッキングをして遊んでいたが、ついにマフィアの敵であるCIAのサーバーに入って登録リストなどに手を出したため、扱いきれない、と思ったマフィアたちによって先述した医師に売られたのだった。→そうしてシャーリーはCIA本部に行くと、そこでこれまでクラブを潰す協力を頼んでいた職員仲間の男性に出会うと、監視カメラや警備職員にも聞こえないぐらいにこっそりと「ルシアン・カウフマン長官は、地下13階にいるぜ。君を待っているそうだ」と言われて、仲が良く、信頼出来ると思っていたその男がここまで自分を欺いていたことを知ってショックを受ける。→部屋に行ったシャーリーは、元・CIA職員だった自分の父親が死んだ後、自分もCIAに入って手ずから育ててくれたカウフマンが聖父だと信じたくはなかったが、ここまで材料が揃っているとクラブの幹部(聖父)だと信じるしかなかった。そしてカウフマン――聖父の《勤勉(ディリジェンス)》――はシャーリーをテーブルに着かせて、特別なルールのポーカー勝負を挑む。「5回先に勝利した方が勝者だ。それでなお、1回の勝利ごとに敗者に質問をして、敗者はそれに『誠実に』答えなければならない」と言われてシャーリーは頷くが、「昔、君の父君ともこれで勝負してね。君の父君は私に負けたから、君の母君と二人分の命を対価にして君はいま生きているんだよ」と衝撃の事実を告げられる。その上、「そして最終的な勝者――私が負けたら、クラブの会員を50名殺そう。しかし君が負けたら、何も知らないCIAの職員が、なんの罪もないアメリカ合衆国の国民を50名殺すように指示してある」と、言われて、自分ではなくて『なんの罪もない人々を犠牲にする』というカウフマンの趣味の悪さにシャーリーは動揺を隠せない。そしてゲームは始まった。→そのころ、楼樹とイヌガミとシャテアたちはシャテアがクラッキングで割り出した地下下水道からCIA本部内に入り込んでいたが、下水道には当然のように職員がいて、その中の一人が――なんと、カウフマンと同じ顔を持っていた。そう、カウフマンは実は自分の他に2名のクローンを持っていたのだった。→この作戦の数日前。シャーリーはもう退役した老年のCIA長官や幹部たちの家に訪れて頭を垂れ、クラブ関係の全てを伝えてこの作戦を手伝ってくれるように頼んでいた。作戦の日は、退役した幹部たちのための記念式典があったので、老人たちはそうして会議室から動き、そこにいた職員たちから銃などを奪って楼樹たちが下水道にいる時にすでに静かにCIAの内部を乗っ取っていた。→シャーリーはやはり聖父の一人だけはあるカウフマン相手に、ポーカーで一進一退の勝負をしていたが、お互い4勝していて、最後にシャーリーは『ハートのロイヤルストレートフラッシュ』で「勝った!」と思ったが、カウフマンがそれを超える『フォー・オブ・アカインド』という、フォーカードにプラスしてジョーカーを入れたポーカーでの最強の手を出してきたので敗北した。→絶望するシャーリー。罪なき人々の命を奪うのをやめるようにカウフマンに懇願すると、「ならば代わりにこの銃で君の頭を撃ち抜きなさい」と拳銃を渡されるが、シャーリーがトリガーを引くと……空砲だった。カウフマンは最後まで、シャーリーの絶望の顔を見たかったのだ。しかしそのすぐ後でシャーリーはやっとカウフマンを嘲るように笑った。楼樹と元・CIAの老人たちがこの本部内を占拠したことを知ったのだ。そしてFBIがこの部屋にやって来て、「CIA長官に成りすまそうとした人間よ。捕まえてちょうだい」とシャーリーが言うと、連行されていくカウフマンは最後に「『23』だ、シャーリー」と呟いて捕まって行った。→楼樹たちは合流し、カウフマンが告げた『23』の意味を探ろうとする。そしてシャテアがCIAのサーバーやネットに繋いでもいないパソコン本体、CIA職員でクラブの息が掛かった人間のスマホを探ると『23――《慈愛(アフェクション)》、ゼーレン・オルリック』という、聖父の一人の情報のことだとわかる。→ゼーレン・オルリックはアメリカが誇る世界的なバイオ・遺伝子関連企業のCEOであり、楼樹たちは目を疑うが信じるしかないと思ってオルリックの会社にヘリで乗り込むことに。すると途中で以前、十二使徒ゲームにて楼樹が殺したはずのバズーカ・バンシーたちがいて、楼樹は「あいつらは、確かに僕が倒したはずなのに――!!」と狼狽する。しかしそれでも手は冷静にバズーカ・バンシーたちを殺し、オルリックが待ち構えていたところに辿り着く。オルリックは楼樹の姿を見ると自分に何かの注射薬を打ち込むと――全身の筋肉が膨張・肥大し、手指や爪は肉食動物のように鋭くなって、つまるところ遺伝子操作をしたのだった。→楼樹はオルリックの一撃を喰らって、神経が痛みを伝えてくる。しかし脳内は違うことを告げてきて、「『人間である赤神楼樹』よ。ここがお前の終着点なのだろう?」「否! ふざけるな!! 僕はあいつらを殺すためなら――」脳内からの囁きを否定した瞬間、楼樹はもう、人間である臨界点を超越していた。人間とは見られない容貌になったオルリックすらも、「そうか……。私はここまでしても、『まだ人間』だったのだな、『ケモノガリ』よ……」と言って楼樹のククリナイフに首を刈られた。→いろいろな処分が済んだ後、イヌガミが二人だけで話したい、と告げてきた。イヌガミは「だんだんと自分の脳内にて、人間の思考が消えて行っている。もう、二桁の足し算すらももう出来ないのだ」と、楼樹が感じたのと同じようなことを言った。→そのころ、サイクロプス・ジャックはとある一つの町にて大量虐殺をおこなっていた。無邪気に、町人全員を玩具のように殺害していたのだ。アストライアも監視のために付いて行ってはいたが、二人の仲は常に冷戦モード。ジャックは「ああ、早く殺したい、ケモノガリ! あいつを殺してぜーんぶ食べたら、どんな味がするんだろう! 俺はどんだけ進化するんだろう!!」と、恍惚の表情で夢を見ていた。アストライアが告げる、次のステージはチリの小さな諸島――。

 うーん……?
こっちの内容自体にはあんまり唸りませんでしたね。
おそらく今巻の胆であるポーカー勝負も、「カイジ」や「ライアーゲーム」などの駆け引き勝負漫画を読んでるとカードなどの描写不足なので「都合よく展開を書いてるだけじゃ?」と感じてしまって……。
まあ、ページ制限のあるラノベでそこまで求めちゃいけないのだとは思いますが(ページ制限で「境界線上のホライゾン」は除くw)。
 個人的にはCIAを退役したご老人たちの無双がもっと見たかったなあ。「サイレント・キリングの達人」ってどんだけ強いんだよ、とか(笑)。
 あと、シャテアのクラッキングがどれだけすごいのか、とか。ここはいま、「王様達のヴァイキング」王様達のヴァイキング 1 (ビッグコミックス) -
王様達のヴァイキング 1 (ビッグコミックス) -
を原作・監修している作家の深見真先生にお願いして少しご教授してもらっても良かったのではないでしょうか。深見先生もGAGAGA文庫で書いたことがあるそうですし。

 しかしまあ、平均水準以上のものはちゃんと読ませてくれましたし、帯のコピーが良かったので星3つ★★★☆☆ですね。

posted by mukudori at 20:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | ガガガ文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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