2015年06月05日

公開処刑人 森のくまさん (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)/堀内 公太郎

公開処刑人 森のくまさん (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)公開処刑人 森のくまさん (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
堀内 公太郎

宝島社 2012-08-04
売り上げランキング : 213120

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


お嬢さん、お逃げなさい。

 ネットの大手掲示板を賑わせているのは【森のくまさん】という、連続殺人鬼。ただし、悪い子しか殺さないよ! 掲示板にターゲットの名前や銃所、悪質行為の所業などを書いておけば、くまさんは即座に動いてそいつを殺しにやってくる。国民や警察、マスコミたちの緊張や推理を弄ぶかのように、くまさんは今日も動くのだ。これで殺人カウントは五人を超えた。さて、次のターゲットは誰だろうか? 『このミス』大賞、最終選考作!


 あーあ……。
ここまで【森のくまさん(もりの くまさん)】って大々的にタイトルにも、面白みを出すための掲示板にもいちいちついてますからねえ……。その登場人物の名前が出た瞬間に主犯がわかりましたよ
一度読まれたら、みなさんもすぐにわかると思います。
この作者はいっそもう、最初っから犯人の正体なんて隠すつもりはなくって、単に残酷描写や森のくまさんの『お仕置き劇』を淡々と描写する感じで進んで行っているんですね。だからなのでしょうか? 約310P、結構早く読めました。

 ネタバレあらすじー。
 森のくまさんによって、世間は大賑わい。たくさんの人間が掲示板に殺して欲しい人間の情報を書き込むが、そこは運営が即時に書き込みを消去。そんな中、同じ高校の不良女子たちにいじめられている明日香(あすか)という美少女は、琴乃(ことの)という正義感が強くて太り気味な少女によく助けられていた。しかし明日香の精神はもう限界。二人でいじめっ子の城之内美加子(じょうのうち みかこ)を殺そうとするか、二人で屋上から飛び降りようとする。そこに声を掛けてきた男性がいた――。→明日香たちは城之内を殺すことを考えながら、声を掛けてきた『本物の森のくまさん』と名乗る男に、ネットカフェでの掲示板の『森のくまさんスレ』を使って、IPアドレスには細工をしてこちらの足跡を残させずに、次々とターゲットを選定する任務を遂行していた。男は準備が整ったら城之内を殺してやる、と言ってくれたが、まだいじめられている明日香はもう限界だった。→そして琴乃と一緒に城之内を急襲し、ひと気の無い廃工場に連れ込んで城之内を金属バットでボコる。明日香は指示をし、琴乃が主にバットで城之内を叩いていた。そこに現れたのは、制服姿の警察官。城之内が助けを求めるが――そいつこそが、『森のくまさん』だった。明日香たちの独断専行を少したしなめ、森くまは銃を抜き、城之内を殺そうとする。→しかしそこに、森くまの付き合っている彼女が、森くまの最近不審な言動を見て追いかけてきて、実の兄(本物の私服警官)に告げる。その兄がやって来て、「その制服も、その拳銃も、俺の上司を監視カメラに映らないところを狙って、バットで襲って奪ったものだな!?」「そうですけど、何が悪いんですか? この一見平和に見える日本で使わないものを持っていても仕方ないでしょう?」と飄々と答えてくる。そうして琴乃たちを人質に取った森くまと対峙する彼女の兄だが、なんとか森くまに致命傷は与えずに撃って無力化させる。→森くま、ついに逮捕。ネットの掲示板も大騒ぎ。そして城之内だけでなく琴乃も人質になった時に脚を撃たれていたので、病院に。明日香は最初から捕まった時のことを決めていたらしく、「全ては森くまに脅されてやった」ということにしたので、保護観察処分に。しかし、琴乃と二人きりの部屋で話しているところで明日香は豹変。「あーあ。アンタも、あんな男も信じたのが間違いだったわ。やっぱりあの人のところに行かなきゃね。知ってる? 城之内にはアンタが直接手を下したから、あたしよりも罪は重いわよ。しかもあたしってね、取調べの時に刑事たちの前で泣いてみせたの。だから同情を引けたわ。こういう時、美少女って便利よねえ? まあ、アンタみたいに気持ち悪い外見だったら使えない手段だろうけど。本当に、ここまで醜いアンタがベタベタとレズっぽく触ってくるのが不快で仕方なかったわ。じゃあね。城之内はもう一生歩けないみたいよ。でもまあ一応あたしは転校するけど、琴乃もその脚が早く治るといいわねえ?」と、全ては裏で明日香と【真の森くま】が糸を引いていたことを知らされる。友人だと思っていた明日香にも見放された琴乃は、復讐を決意し、そしてだんだんと集まる人も少なくなって行く森くまのスレッドを追っていたら明日香らしい書き込みがあったので、それにレスをしたのだった。終わり。

 うん……あのだねえー……。
致命的なのは、やはりココ!
森くまの真犯人は、やっぱり名前を見た瞬間から、「えっ!? やっぱりお前なの!? これってミスリードのために、わざと付けている偽名じゃなかったの!?」とか思って読んできましたが……最後までその通りで、ちょっと拍子抜けでしたね。
 あ、ついでに気になった&言っておきたかったことをここで一つ。
せっかく「2ちゃんらしき掲示板を使っているんだから、トリップやIDを付けて生かすなどの工夫はして欲しかった」……ってところですかね。
特に、最後のくまさんスレに、HNが「トゥモロー(おそらく、明日香)」だけが人もいなくなって行っているのに、一人だけで淡々と書き込んでいるところに、HNが「KOTO(おそらく琴乃)」が「トゥモロー」に対して「>>8 もう脚は治ったよ。近い内に会いに行くね、親友ちゃん」とか、これにトリップ(実際の2ちゃんに名前を入力するところで「#(半角シャープ)」の後に好きな文字を8文字まで入れると「◆」の後に適当なアルファベットなどが出てきて、『名無し◆abcdefgh』みたいになります)を付けていて、それに読者が気付いて実際の2ちゃんの自由な宝島社の本を語るスレやトリップ確認スレなどで確かめると、「おっ! 琴乃の氏名を全て【#】の後に入れると、『名無し◆DEATHask』になるじゃん!」とかのオマケ要素も欲しかったですかね。まあ、こんなにも綺麗なトリップが出来ることなんて滅多に無いのですけどww それだけ、作者の後書きが無いのが惜しいです。

 まあ、タイトルとあらすじのインパクトでうっかり購入してしまいましたが……やはりここは「このミス大賞」応募作であるのにミステリー要素があまりないところと、かと言って「日本ホラー大賞に応募した方が良かったんじゃない?」と思わせる要素も無い、微妙な感じ……。
「このミス大賞の最終選考にまで残った作品」というよりも「この出来ならば、やはり受賞は出来ず、最終選考で落ちる要素はふんだんにあったよなあ……」という思いが強く残ったので、星2つ★★☆☆☆。プチ地雷です。

posted by mukudori at 02:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 一般小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック