2015年05月01日

ぼくは明日、昨日のきみとデートする/七月 隆文

 ついにやってしまった……。
一ヶ月に一回しかブログの更新をしてない、という愚行を……!!orz
ちなみに今月も結構仕事が忙しい上に、気候が暑いので、読書するよりも夜は除湿&クーラーで速やかに寝ていたい心境でございます。
でも、更新を頑張るつもりはあるんですよ! 一応ね!
ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫)ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫)
七月 隆文

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君に会えたそれだけが奇跡で始まり。

 京都の美大に通っている南山高寿(みなみやま たかとし)は、電車の中で見かけた美少女に恋をした。一目惚れだ。いてもたってもいられずに告白した彼女の名前は福寿愛美(ふくじゅ えみ)。どんどん惹かれ合う二人だが、高寿は愛美の秘密に気付いてしまう。全ては神の手の平の中での遊びなのだろうか。だからぼくは、別れが待っていようとも、「昨日の君」とデートをするのだ――。


 まずはひとつ、
「読者メーターの感想なんてものは信じるな!」
……と、声を高らかにして言いたいですね。
ちなみに私が本屋で買った時に付いていた帯にあったものです(ちなみに、この時点で九刷でした)。
「電車で読んだのが間違いだった。ここまで涙を我慢しなきゃいけないんだったら、家で読みたかった。」
 う、うおお……。こんな文面を目立つ表帯に持ってくるとか、いきなり、ものすんげえハードル上げてきてますねえ、宝島社!!
まあ読後は、「えーっと、どんだけ涙腺緩いの、この人?」とスタバのフラペチーノでも奢るから、ちょっとこの方のこれまでの読書遍歴を訊いてみたいですね。興味本位で。けしてナンパじゃないですからね!(笑)
ついでに裏の帯にも読メの読者のスイーツ()っぷりをがっちりと感じさせる三人分のコメントがありますので、本屋に入って腹筋体操をしたくなりましたら、この本を探してください。そこらのお笑い芸人よりも単純に、数秒で腹筋を鍛えさせてくれますよ。

 ネタバレあらすじー……なのかな? 今回のは「あらすじ」というにはちょっと微妙なラインです。
 高寿、美大に行くための電車の同じ車内に乗っている愛美に一目で惚れたので、愛美が降りた駅でたまらず追い掛けて行って、「一目惚れしました! 携帯電話の番号を教えて欲しい!」と告白するも撃沈した……と思いきや、高寿が美大のマンガ科で動物園に行ってクロッキーの授業をやっているところに愛美がやって来て、「そのキリン、上手いね。やっぱり教室に張られただけあるんだ。お尻のラインもいい感じ」と言われたので高寿は驚く。そして愛美も「携帯を持っていないのは本当なのよ。でも、よく考えたらやっぱりあなたと付き合いたいかも。だから、今日は逆に追い掛けてきちゃった」と言われて二人は付き合うことに。→ラブラブな日々を過ごす二人。しかし愛美の表情はだんだんと沈鬱になってきており、高寿はある日、愛美の手帳を見てしまう。そこには「五月二十三日、彼にとっては最後の日」と書かれていて、高寿は見なかったふりをするが、愛美にすぐ看破される。→愛美は自分のことを、この世界とは時間が遡行して流れているパラレルワールドから来た人間だと言う。
つまり時間軸を矢印で表すと、
…………←←数十年前の日本の関西で某大震災の日であり、高寿は家に潰されそうになっていたところを見知らぬおばさんに助けられる。
四月某日、二十歳の高寿が一目惚れ。→→→→→→→→→→ 5/23、ここまでが、高寿の人生の中で愛美がいる世界。
愛美が高寿の前から消える日。   ←←←←←←←←←← 5/23、ここから愛美の地球での短期生活は始まっていて、最初の記憶は三十路近くの辺りからどんどん若返って行き、手帳に高寿との思い出のメモを取っているが、最後はほとんど高寿との楽しい記憶が失われて行ったが、高寿に抱き締められて身体ごと消えてしまった。
そうして愛美は故郷のパラレル世界に戻るのを明かす時に、「私が五歳ぐらいの年齢になってもう一度この世界に来た時には、三十路ぐらいのおじさんがお祭りの屋台の爆発から庇ってくれた」と言っているので、おそらくは2013年の福知山での……あの事件でしょう。
このSF的設定を保持しつつ、タイトルでは「パッ!」と目を惹くように「ぼくは明日、昨日の君とデートする」という思考は読者に植え付けられていますよね。
それに加えて、事件の名前こそ出していませんが、日本人にとってはなかなか忘れることの出来ない印象深い関西方面の事件を扱っているのを含めると、この本の中でパラレルワールドを扱っている全てが見えてくる訳です。
なのでもちろん最後にパラレル世界から来た五歳の愛美がお祭りでの事故に遭った時に庇ってくれたおじさんの正体は――……これ以上語るのは、蛇足で無粋でしょうね。

 しっかし……もうちょっと愛美のキャラをパラレルワールドっぽく、いわば『あざとく』作ってくれなかったのかなあ?
 一般向け文庫だから、と言ってしまえばそうなんですが、名前も普通、性格も普通、見た目は美少女……って、これはもういっそMW文庫で出しても良かったのでは? 作者はどうやら電撃出身らしいですし。
 ついでに追及したいのは、見た瞬間にいかにもな矛盾を感じさせる愛美の台詞を言わせることになる、高寿の受けている美大の授業描写の辺りで「このクラスでは実力が図抜けている人がいて、それでいつも一位か二位の技術を争っている徳田くんは、勝手にみんなの作品を教室の内外に張るのだが〜」みたいに書いていますが、そこまで描写するなら、徳田くんのライバル(?)のことにも最後まで言及して欲しい。
こっちが勝手に「おっ! もしかしてそのライバルって、主人公は自分が気付いていないだけで、『俺って絵UMEEE!!』なやつなんじゃね?」とか思っていて楽しみだったのに、最後まで放置でした。それなら最初っから、伏線っぽく張るな。もしくは「美大で実力が図抜けている人たちはやはり頭もどこかおかしいようで、徳田くんと仲の良い林原くん。この実力者二人はいつも突拍子の無いことをしている。今日のはこの前のクロッキーで上手いものを二人が選んで張っているようだ。」とかにしてくれ(この描写は素人がテキトーに書きましたので、お許しを)。頼むから。
 それと変に詳しく描写している、「愛美とのデートを成功させるために、下見として唐揚げ屋に女子高生たちが並んでいるけれど、ぼくは誰も並んでいないピザ屋で一切れ買ってみた。それが意外と美味しいのだった。」ここもその理由とか知りたかったですね。しかもその後で唐揚げも買ってみますけど、「そこまで美味しくはなかった」と感想を言っているのに。京都での作者の実体験を表した、唐揚げ屋への皮肉描写でしょうか? 京都の人ならわかるのかな?
 高寿が美大学生な描写も上手く生きてはいませんでしたね。しかも探してみたら、作中にある木野美術大学って……高寿が乗っている実際の京都の他の造形大学なんかは実際の名称が出て来ているので探してみると、木野美大って作者の卒業した京都精華大学を隠したネーミングじゃないですか……。
なお且つ、愛美に語る高寿の夢は「イラストも描きつつ、小説家にもなりたいな。いま書いているのは、アンドロイドの女の子の話なんだけれど……」って、オイィ! お前さんの過去の作品に、まさにそういう設定のやつがあるんですけれど……?((((゜Д゜;))))
うーむ、「庶民サンプル〜」ではかなり笑わせてもらった七月先生ですが、こういう痛い側面もあったとは……。

 読メで「感動した!」「泣いた!」なんてほざいていらっしゃる人たちには悪いですが、最初の愛美の「ああ、そのクロッキーが張り出されたんだ。やっぱり上手だね」で読み始めて数ページでラストの展開がもうわかってしまったので、評価は辛辣になります。
星2つ★★☆☆☆。今後、映画化でもして古本屋で高く売れることを願っています。

posted by mukudori at 03:09 | Comment(1) | TrackBack(1) | 一般小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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