2015年03月10日

謎解きはディナーのあとで 01/東川 篤哉

謎解きはディナーのあとで (小学館文庫)謎解きはディナーのあとで (小学館文庫)
東川 篤哉

小学館 2012-10-05
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お嬢さまはアホではありませんか?

 東京・国立(くにたち)署の捜査一課の刑事である宝生麗子(ほうしょう れいこ)は、宝生グループ総帥の娘である、いわゆる『お嬢さま』でありながら、自分の道を行きたくて刑事になった。上司である風祭(かざまつり)警部は風祭モータースという会社の社長の息子であるため、自分のことを存分に親の七光りで照らしていた。麗子はあえて自分の素性は周囲には明かさないが、刑事事件に関わる度に頭を悩ませていた。そこで麗子付きの執事である影山(かげやま)が「お嬢さま、何故このぐらいの謎が解けないのですか?」と麗子を馬鹿にした口調で言ってくる……。ドラマ&映画化もした人気シリーズ!


 ……無いわー……。
この作品は、作者の東川先生が「広島出身の岡大法学部卒」というのでかなりシンパシーを受けて買ってみました。
月9でドラマ化したのは知っていましたが、全然見ていませんので、「小説では○○だったけど、ドラマだったら××に改変されてた」とか良い改変がされてあることを望みますね。
 まず、どれもトリックが単純すぎる。読んでいて、「おいおい、麗子。ここまで材料が揃っているのに、どうしてわからない?」と突っ込みたくなりますね。
 次に致命的なのは、普段の麗子の口調が「ありえないだろ!」と言いたくなるぐらいに『お嬢さま』ではないんですよ……。
「――んで? このあたしの推理のどこが悪いってーのよ、影山?」とか、影山も「……んで? それがどうかしましたか、お嬢さま?」とかね……。まあ、後者の影山の方はあえて麗子を馬鹿にするためにそんな口調になっていたんだとは解釈出来るのですがね。
お嬢さまなのに、下町気質っぽい一人称の「あたし」とか「んで?」「謝って済むなら、警察いらんっつーの!」とかの略式言葉はやめてくれよ、麗子……orz
 ついでに、東川先生の「風祭警部の推理に、麗子は嫌な予感。」とか「〜にて、ワイングラスにまた注いでくる影山。」とかの、あんまり効果を成しておらずに、読んでいる途中にやけに違和感を覚えさせる体言止めの多用。これはマジで勘弁してくれ。

 ネタバレあらすじー。
1話……吉本瞳(よしもと ひとみ)という女性が自分のアパートの室内で、編み上げブーツを履いたまま絞殺された事件。靴を履いたままの死体だったので、どこかで絞殺された後で自分の部屋に運ばれた→つまり、男性が犯人の可能性が高い! と風祭警部は推理する。そこで瞳と付き合いのあったエリートリーマンな田代裕也(たしろ ゆうや)が上げられたが、田代にはアリバイがあった。麗子が自宅に帰ってきて影山に愚痴ると、「お嬢さまはアホでいらっしゃいますか」と言われて、影山の推理を披露される。瞳は出掛けようとしたところで天気が曇り空になってきたことに気付き、元から無精な性格でもあったから、自室でブーツを履いたまま四つん這いのような姿勢になって歩き、ベランダの洗濯物を取り込んだ。そこに居合わせたのが、田代のもう一人の恋人の女で、土曜日に田代が釣りに行っている間に瞳の部屋の合鍵を使って侵入していた。だが、出掛けたと思っていた瞳が戻ってきたので鉢合わせをしてしまい、思わず殺してしまったのだった。
2話……若林辰夫(わかばやし たつお)という、動物病院を経営している老年の男性が毒殺される。妻を早くに亡くしていた辰夫は、最近になって三十代の家政婦の女性との再婚を家族に伝えていたが、「自分たちがもらえる予定だった辰夫の財産が減る」とのことで、あまり歓迎はされなかった。またも難航する捜査に、辰夫の孫の雄太(ゆうた)から「昨日の夜、トイレに行きたくなって起きておじいちゃんの部屋を見たら、ガラスの窓の向こうに何か火みたいなものがゆらゆらと点いてたよ」という重要証言が取れた。しかしそれでも犯人がわからないので麗子が自宅でまたしても影山に情報を喋ると、あっさりと犯人がわかる。雄太が見た火の正体(イコール、犯人のこと)は、家族の中に喫煙者が数人いるが、その中でも一度点火したら蓋を閉じない限り火が点いている、オイルジッポーライターを使っている人間が犯人だ、と。
3話……『藤倉(ふじくら)グループ』の家にて、そこの息子の俊夫(としお)が銀座の飲み屋にて出会い、惚れて連れてきた高原恭子(たかはら きょうこ)という美女が藤倉家のバラ園にて殺された。捜査が難航したので麗子は〜(以下略)。それでまあ、恭子の飼っていた黒猫が右脚を怪我していたので、その時に主人である恭子を殺した犯人の手を引っ掻いたのではないか=つまり、恭子の死体をあえてバラ園に置いてバラの蔓を絡ませ、その後で発見したのを装い、「恭子が生きているかもしれないし、可哀想だから」という理由を付けて自分の手にバラの棘で引っ掻いたような傷をわざと付けた人間で、恭子の死体を運ぶために藤倉家の物置にベビーカーがあるのを知っているぐらいの知識がある人間が犯人だと行き当たった。
4話……麗子の大学時代の後輩だった沢村有里(さわむら ゆり)が結婚式を挙げるのに、麗子は「なんで後輩のあの子があたしよりも先に……」と、ぶつくさ言いつつも白金台にある有里の家に行く。その家には没落華族の西園寺(さいおんじ)家の末裔たちも住んでいて、影山が自分よりも年上の老年執事に対して珍しく尊敬の意を示していた。式が終わって披露宴の時、有里の悲鳴が聞こえたので部屋に向かうとその部屋には鍵が掛かっており、外から鍵を開けると胸をナイフで刺された有里がいたが、麗子たちの応急処置によってなんとか命は助かった。影山はその場で西園寺琴江(ことえ)という老年女性に対し、「先ほどのあなたさまは、どうして私が麗子さまを呼んだ『お嬢さま』という言葉に振り向かれたのですか? この家の執事の吉田(よしだ)さんも、どうやらあなたさまのことだけを『お嬢さま』と呼んでいらっしゃいますよね? ここから考えるに、鍵を取ってきて真っ先に有里さまの部屋に入った吉田さんは、部屋の中に隠れていたあなたさまの姿を見て、けれども長く恩のある西園寺家を庇うために黙っているのではないでしょうか?」と看破した。
5話……身長が低いのがコンプレックスな四股男、野崎伸一(のざき しんいち)が自室の中で誰かに殺された。野崎とその彼女が部屋に入って行くのを見た宮下(みやした)という隣の部屋の男は、「その時の女性は確か、150cmぐらいの身長でしたよ」と証言するが、次に杉原(すぎはら)という力士志望の男は「170cmぐらいの女性が出て行くのを見ましたよ」……この矛盾する二つの証言に当て嵌まる女性がいない。麗子はまたも影山に(ry そうしたら、約160cmの野崎はいつもシークレットシューズを履いていたことに気付き、犯人は犯行後に野崎のシークレットシューズを使ったとわかる。なので普段は160cmぐらいの身長な女性に絞れて、一方の女性は野崎と海水浴に行っていたこともあるので、もう一人の方だ、とわかった。
6話……悪徳金融会社を営んでいる児玉絹江(こだま きぬえ)が夜中に頭部をトロフィーで殴打されて殺された。窓ガラスが割れた音に家族が気付き、みんなが集まったその場に絹江だけがいないことで探していると、そこではまだ体温の残っている絹江が事切れており、血文字でのダイイング・メッセージらしきものの跡が残っていたが、気付いた犯人によって消されたようだった。犯行に使われたトロフィーが2階の窓に投げつけられていたことから、絹江の姪っ子で13歳の娘の里美(さとみ)は「トロフィーを投げる筋力が足りない」として除外される。初日の捜査の終わり際で何かを言おうとしていた里美だが、その場で泡を吹いて気絶してしまった。病院に運んで目が覚めても、麗子たちには何も言ってくれない。麗子が影山に(ry そして影山は「もしかして里美は、従兄で次男の吾郎を好いていてアリバイを作ってやったのではないか。それならば、高校時代にプロも目を留める野球選手として名高い存在だったが大学に上がって肩を壊した吾郎も自分と同じように除外されると思ったのではないか」と考えた。しかし影山は、更にもう一歩踏み込んだ推理を披露した。→深夜、ベッドで寝ている麗子を襲ってきたのは日本刀を持った暴漢だった。麗子が寝ていたところは――里美の部屋だった。真犯人はそれを知らずに、自分の犯行に変な手助けをしてくる里美を脅威だと思って寝ている里美(麗子)を襲い、隠れていた影山がきちんと麗子を守って真犯人とバトル。影山が捕まえた真犯人は――絹江の秘書兼運転手である前田俊之(まえだ としゆき)だった。前田は「あの女の所為で、俺の恋人は自殺を――」と理由を語るが、麗子の「あ、そういうのは署で聞くからいいわ」とすっ飛ばす。どうして吾郎ではなくて前田だと影山が思ったのかは、絹江が殺されたその夜の夕飯の席で、絹江と夫の和夫(かずお)が口論をしており、犯行を擦り付けるには和夫がまさに適役なのに、ダイイング・メッセージで「ゴロー」と書いていたのはその場にいなかった人間しか考えられない……という理由だった。
オマケ……自宅で優雅に過ごす麗子の下にプレゼントの箱が届いて、開くと黒い仔犬が入っていた。麗子が「バトラー」と名前を付けた仔犬と遊んでいると、影山が「ちょっと失礼を」と仔犬に付いていた首輪を壊すと、そこには機械――盗聴器が埋め込まれていた。麗子は「あたしのファン? もしかして、風祭警部の仕業かしら?」と疑問に抱くが、影山は「いえ、この仔犬の入っていた箱、運送会社、首輪のメーカー……いずれも、我らが宝生グループの商品でございます。そして、お嬢さまの私生活を忙しい時間を縫ってこうしてまで覗きたい人物を推測しますと……総帥であられるお父上さまの仕業かと」「まあ、お父さまが!? 我が家で一番変なのってお父さまかもしれないわね……」と、麗子は今日も世界を飛び回っている自分の父親に向けて溜め息を吐いたのだった。

 うーん……微妙、というよりも読むのが苦行でした。
何故か、っていうと……毎回パターンが同じなんですよね。
殺人or殺人未遂の犯行→麗子、風祭警部と一緒に捜査。緩いギャグ展開→謎が解けないので影山に相談して解決……という。
様式美……と言ってしまえばそうなんでしょうが、文庫一冊の中でパターン化しすぎており、「ハイハイ。早く影山カモーンщ(゜Д゜щ)」と思うことがしばしば。
 最後の「解説」ではミステリ評論家の千街晶之(せんがい あきゆき)氏が、「影山の毒舌が出て来た時点で、読者は一度本を閉じて、情報を整理して理詰めで推理するべきである。そうすればなんとなく真相に近いところに辿り着けるから」と書かれていますが……えっ? そういうのをわざわざ読者に強制するのか? つーか、もうこの「解説」を読んでいる時点で本書を読破してるのに? そういう情報を出すなら、せめて前書きの方にしておいてくれよ……と、突っ込みたくて仕方ありませんでした。
なにせ、人物&情報&アリバイが出て来て麗子が自宅に帰った時点でもう読者は八割方、「こんなにヒントがあってもなんで犯人に気付かないんだよ、馬鹿女……」と思ってますからね。
正直、影山の存在は「ビブリア古書堂の〜」などが流行ったように、ライトミステリ小説、もしくはキャラミステリ小説を作者が狙って作って出したようにしか思えませんね。いやまあ、今回の話は「ビブリア〜1巻」の発刊よりも一年ほど前に出ているんですがね。そういう意味では、嗅覚の良い&センスのある作者だと思います。

 評価は……星1つ★☆☆☆☆かな。地雷です。でも成人未満……中高生ぐらいの子が読んだら面白いのかもしれません。
しかし、おそらくよほどのことがない限り、ドラマ版の方が良く出来ているような気がします。こっち(原作)は一話の密度がかなり低いので、一時間尺のドラマにするにはたぶんかなり他のアイドル俳優萌え要素を入れていたと思いますから。

posted by mukudori at 05:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 一般小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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