2014年08月23日

断章のグリム〈1〉灰かぶり/甲田 学人

断章のグリム〈1〉灰かぶり (電撃文庫)断章のグリム〈1〉灰かぶり (電撃文庫)
甲田 学人 三日月 かける

アスキー・メディアワークス 2006-04
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それは、人間の狂気が生み出した悪夢の灰かぶり――。

白野蒼衣(しらの あおい)は進学校の生徒だ。だがクラスメイトの杜塚眞衣子(もりづか まいこ)が休んだ時、プリントを持って行くために眞衣子のマンションの階段で出会ったのは、両目を抉られた女性!? 女性に襲われそうになった時、そこに時槻雪乃(ときつき ゆきの)というゴシック服の美少女が現れて、自分の身体にある傷口からの炎で女性を倒す。そして雪乃から聞かされる、自分は『泡禍(バブル・ペリルorほうか)』という、特殊な人間たちが自分の心から生み出した悪夢たちが実体化するのを倒す、『泡禍騎士団』の一員で『騎士』ある、と――。そんな空間に入ってこれた蒼衣にも何かがあると感じた雪乃は、以来蒼衣の側にいる。前作の「Missing」で異様なまでのホラーやオカルト知識を見せた、電撃文庫の誇るグロ作家の作品!


 あ、普通に面白い!
この作者の甲田先生は『あの津山三十人殺し事件』の舞台の岡山県津山市出身ということで……県民を愛していてグロも大好きな私としては期待大でしたが、見事にグロ描写に応えてくれますねえ……(ニヤリ)。県知事さん、いまからでも甲田先生に名誉県民賞とか与えてあげてくださいよ!(笑)
 後で語りますが、読んでいて「……ゴクリ。よくこんな新しいグロ描写考えたな……」と思いましたね。

 ネタバレあらすじー。
 蒼衣は眞衣子にプリントを渡しに行くところで、マンションの階段でなんだか変な空気に包まれて、両目が無いゾンビのような女性が襲ってくる。そこにゴスロリ姿の雪乃が助けに入って、「あなたが今回の所持者(ホルダー)なの? 否定しても駄目よ。この後は嘘が効かない人のところに連れて行くから」と言われて、『神狩屋(かがりや)』という骨董店に連れて行かれて、そこで鹿狩雅孝(かがり まさたか)という男性店主と田上颯姫(たのうえ さつき)という小学生ぐらいの幼女を紹介されて、鹿狩に「さっきの事件はこの子じゃないね。確かに何かは持っているようだけど」と言われて解放されるも、以来雪乃は蒼衣のお目付け役になった。→杜塚眞衣子の母親は、末期の癌で余命もあと少し。本人の希望で自宅療養だった。母親と二人暮らしな眞衣子は、母のことは好きだが昔から母に虐待されていた左足に無数にあるタバコの火の痕などを見ると、その気持ちも薄れていた。眞衣子は蒼衣と一緒の進学校なので勉強もしなければならないが、癌との闘病生活で苦しんでいる母が眞衣子に頻繁に当たるので、それを我慢しながらも家事をしていた。特に、母の好きな缶詰めの桃とプリンを抉って差し出す時は、幸せを感じていた。だが母は「学校なんか行かずにずっと私の世話をしていろ!」と言うので、眞衣子が優しい従姉の夏恵(なつえ)お姉ちゃんに自分の代わりに日中の母の世話を頼んだが、その日のマンションに夏恵は来なかった。夏恵の両親も心配しており、夏恵は行方不明として扱われることに。→蒼衣は『神狩屋』によく行って、鹿狩から「颯姫は人の記憶を消せる虫を飼っている能力なんだ。だからその弊害で、颯姫は一日しか物事を覚えていられない。しかも戸籍も無いので学校には行っていない」、「ここには他に夏木夢見子(なつき ゆみこ)という喋らない子がいるが、その子の予知能力で次に起こる事件を予測出来るんだ。……ああ、今回は灰かぶりらしいね。知っているかい?」「それってシンデレラのことですよね?」「うん、そうだけど原作は違うんだよ。ドイツの民話をグリム兄弟が童話らしく親しみやすく変えただけで、本物はかなりえぐいんだ。最後に灰かぶりが可愛がっていた鳩が飛んできて、意地悪な姉たちの目を抉ったりね」……などと話して過ごしているうちに、眞衣子の母が死ぬ。そこで雪乃たちが「――くっ、もうもしかしたら間に合わないかもしれない!」と言って青ざめる。→葬式にやってきたのは眞衣子の母の兄や姉たちの親しい親族のみ。そこで眞衣子は「ああ、お母さんのこの骨って白くてカリカリしてて美味しそう……」と思った瞬間、お骨拾いをしていた親戚たちがまだ焼けたばかりで熱い眞衣子母の骨を食べだす。その上、お骨拾いには眞衣子を除いて7人いたが、みんなでお互いの目玉を抉り出して食べる。眞衣子は悪夢のような光景に逃げ出すが、左の靴が脱げたので左足はぼろぼろに。目玉を食べ合っている親戚たちの顔からは、なんと鳩の手足や顔などが出てきていた。そこに騎士団のメンバーが集まって、颯姫の能力で被害者以外の記憶消去や大男の瀧(たき)と美人な可南子(かなこ)という葬儀屋コンビも来て、被害者たちをバラバラに解体して帰って行く。→眞衣子は翌日の高校に早くから来て、自分の上履きを履こうとするが、ずる剥けた皮などで履けないので「靴が履けない、履けない! 役立たずならこんなもの……!!」と要らない皮などはむしり取って、流血したままで靴を履き、廊下で出会った佐藤先生という男性教師が「杜塚、お前その足は……」と言った瞬間、眞衣子は母親に食事を与えている時に使っていたスプーンで先生の片目を刳り抜いて食べる。「目玉は罪なの。だから目玉は取って食べてあげなきゃ……」ともう片方も刳り抜こうとしていると、そこに雪乃と蒼衣が駆け付けてくる。雪乃は「正常な所持者なら、大人しくさせて悪夢を抜くことも出来るんだけど……」と言うが、もう眞衣子の心は壊れているので戦うしかなかった。雪乃はいつもカッターナイフを持っていて、自分の左手首を切り裂いてそこからの業火で応戦する。ただし、その際にもちろん雪乃にも痛みは感じる。眞衣子は屋上へと逃げるが、追う雪乃たちは眞衣子の足からの血から生み出された異形の鳩たちが廊下に付いた足跡から出てくるので、その血を踏んだ蒼衣たちの足にも鳩たちが湧き上がってきて、雪乃などは脇腹にまで駆け上がってきて、内臓を鳩につつかれて食われる。そこに現れたのは、いままで雪乃にしか見えていなかった、雪乃の双子の姉でいまはもう両親を殺して自分も亡くなっている風乃(かぜの)だった。何故か蒼衣にも見えて会話が出来る。そして風乃は「ほおら、雪乃ちゃん。お姉ちゃんに助けを求めてごらんなさい? そうしたら何もかも、私の『魔女の火炙り』で焼いてあげるから。あなたはいつも、私の下位互換だものねえ?」と囁いてくるので、危険だとわかっていながらもピンチな雪乃は風乃に懇願すると、一瞬で鳩たちは焼かれて消えた。鳩による脇腹の傷の所為で、もう戦う力が無い雪乃の代わりに蒼衣が眞衣子を追いかけ、眞衣子自身も自分の泡禍に食われているところを目にする。そこで蒼衣は風乃に「ほら、行ってあげなさいよ、王子さま?」と眞衣子の靴を渡され、「はい、杜塚さん。君の靴だよ。王子じゃなくてごめんね。でももう君のことは誰も縛ったりなんかしない。だから――変われ!」と叫ぶと、そこに鳩たちが集まってきて、残ったのは炎で少し焦げた眞衣子の制服だけだった。蒼衣は、『所持者の物語を自分の中で許容するかどうか』の断章(異能力)を持っているのだった。→蒼衣は子供のころの幼なじみで葉耶(はや)という女の子と仲良しだった。でも葉耶は変わった女の子で、魔法陣を書いて「この中にいる蒼衣ちゃんとわたし以外の人は死にますよーに。わたしの本当を知っているのは蒼衣ちゃんだけ。本当の蒼衣ちゃんを知ってるのもわたしだけ」などということをするので、蒼衣も付き合いに嫌気がさしてついに、「本当の僕って何? 僕には葉耶ちゃん以外にも友達はいるし、普通の生活があるんだ! だから葉耶ちゃんも現実を見ようよ!」と言った瞬間、蒼衣に拒絶された葉耶は持っていたカッターナイフで自分の首を切ったのだった。そこから泡禍があって、葉耶の身体は蟲や鳥たちが集まってきて瞬く間に喰らいつくされた。→エピローグ。神狩屋に来た蒼衣は、鹿狩に「そうか。やっぱり君も泡禍を経験しての『断章(だんしょう)』持ちだったんだね」「はい、だからこれからは……僕も騎士団に入れてください」「それは良い知らせだ。君みたいな断章はレアだからね。ところで今回の鳥葬は、意味をわかっていてしたのかい?」と喋る。そうして蒼衣は騎士団の一騎士となったのだった。

 最初は「この人ってグロ書きって言われてるけど、どんなもんよ?」と思っていたのですが……うん、なかなかやるなあ。鳩の脚や顔が自分の脚や顔から生えてきたら嫌ですよね……。前述したのはここの描写です。
 でも眼球抉りのシーンはこの前のこれで耐性は付いていたので(でも甲田先生の描写の方がはるかにグロイですが)、あんまり恐怖は感じなかったなあ。つかこっちの本が出版されたのって、2006年なんですが……例のおかま事件みたいにパクリとは言いませんけど、もしかしたら鮎川先生は書くための参考ぐらいにはしたと思いますね。でもあっち「眼球を一つでも抉ったら、頭や神経に届いて死んじゃうの☆」だったのに対して、甲田先生の方は佐藤先生が眞衣子に乱暴に目玉を抉られても生きている不思議!w 夏恵なんか両目を抉られてても動いていましたしね。眞衣子の断章が働いていたのもあるのでしょうが。
 でも最後に記憶を消す前の佐藤先生が「なんで杜塚はあんなにむごいことをされなきゃいけなかったんだ?」と言っていましたが……鹿狩の言う通りに眞衣子は「鳥葬」で死んだのなら、そこもちゃんと描写して欲しかったですね。本文では「〜鳩たちが眞衣子の身体に集まって行き、散会した時には白い鳩が一匹、開いている窓から空へと飛んで行った。」だけじゃあなくって、眞衣子の悲鳴とか、「ひぎっ、ぐひゃっ! お母さん、やっと会える……」とか叫ばせるとか、地の文で細かく鳥葬の様子を「眞衣子の肌が裂ける。ピンクの内臓が鳩たちの嘴で引き出されてつつかれ〜」とかして欲しかったかなあ。買ったこっちは作者の性癖(というか、書く内容)はわかっていますし、帯の時点から明るいエンディングじゃねえな……と感じていますし。だから、眞衣子の最期が上記したような感じで終わったのがちょいと不満です。
 あと三日月かけるさんのイラストは……表紙だけは良かった。表紙だけは。口絵カラーはちょっと手抜きっぽく塗ってあって、モノクロ挿絵もインパクトが弱い。なんだか昔のコバルト系の少女小説っぽいイラストです。瀧と可南子が来た時の絵なんて、『葬儀屋』なんて呼ばれている怖さが全然無かったですね。「どうも。今回で一応イラストレーターのプロデビューです!」とか折り返しに書いてありましたけど……『もうちょっと頑張りま賞』ですね。これからの躍進に期待。まあ、このシリーズの全17冊を一気に買ったので、17巻と1巻を見比べて「三日月さん、成長したなあ……」と思わせてくれるかな? ネタバレは聞くのもするのも好きな私ですが、そこは楽しみに取っておきましょう。

 イラストの分をちょっと引くのと、眞衣子の最期の不満、バトルで雪乃が怪我してばかりであんまり活躍しなかったので星4つ★★★★☆かな。でもオススメです!

posted by mukudori at 01:49 | Comment(0) | TrackBack(0) | 電撃文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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