2014年05月24日

エロマンガ先生 01 妹と開かずの間/伏見 つかさ

 サーセン! ちょっと今週は金曜日まで忙しかったので、ぎりぎり土曜日更新でっす!

エロマンガ先生 妹と開かずの間 (電撃文庫)エロマンガ先生 妹と開かずの間 (電撃文庫)
伏見 つかさ かんざきひろ

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どん! どんどんどん!

 高校生にしてライトノベル作家である和泉正宗(いずみ まさむね)には、親が連れ子同士で再婚したので、中学生の義妹、紗霧(さぎり)がいる。だがこの義妹は……引き籠もりだった。口も利かず、ご飯を求めている時は、一階にある正宗の部屋に、二階の部屋から「どんどんどん!」を足を踏み鳴らして催促する。どうしたらこの義妹が引き籠もりを脱してくれるのか……、と頭を悩ませている正宗だが、ある時、紗霧の本当の正体を知って!? 「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」の作者&イラストレーターの送る、新兄妹小説!!


 あー、良くも悪くも、伏見節だなあ……。
 まず、前作の「俺妹」では血の繋がった兄妹だったので、「えっ、お前らそんな終わり方でいいの!?」的な、なかなか後味の悪いエンドだった(当方の「俺妹」のレビュー自体は7巻までで止まっていてすみません)。
そこを今度は「義兄妹」にしてきたのはいいと思います。結婚出来るし!
 だが、ちょっと主人公がハイスペック過ぎる。顔はもちろん「俺妹」の京介の方がいいのですが(正宗はちょっと童顔)、中一のころにライトノベル大賞(おそらく、というか断言してもいいぐらいに電撃大賞だと思います)の一番下の賞を獲ってデビューして、メディアミックスこそは無かったけどちゃんと一シリーズを想定していたエンディングまで書いて本にしてもらって、サイン会まで開いた。ちなみに何故か再婚した両親たちは家に全くおらず、料理も上手で紗霧に料理を作ってあげている。しかも超速筆で、編集さんが「プロットを持ってきて」と言ったのに『完成原稿を三巻分ぐらいまで持ってくる』……って、どんなハイスペック野郎だよ。「原稿を三巻分持ってくる〜」の元ネタは、「禁書」の鎌池先生&担当編集の三木さんが話していたことだと思いますけど。でも、こいつは高校に通いながらですよ?
 そんでもって、今巻はまだ一巻のくせに、「父母が何故かどちらも家に不在の謎」、「紗霧が頑なに引き籠もっている謎」、「現在中学一年生の紗霧が小学生のころから(正宗のデビュー作からずっと担当)イラストレーターとして活躍していて、『絵はお母さんに習ったから』という謎」、「正宗が『昔、俺が無料でネット上で小説を公開していた時に、ファンメールもらって嬉しかったなあ。あの人、いまごろどうしてるのかな?』……という謎の人物の示唆」、「正宗が言っていた、『このレーベルで、俺より年下の作家がいる』というまたも謎の人物の示唆」、「紗霧の『私、好きな人がいるからっ!』という一巻ラストで取ってつけたような、ひどい終わらせ方」、「山田エルフ(やまだ -)の本物(?)のエルフ耳の真相」、「紗霧が一年前に医者にも認定された引き籠もり具合(具体的にどういう病気でだ?)」……などなど。
伏見先生の文章は比較的サクサク読める部類に入るんですが、これらの謎を読者に与えるだけ与えて全く回収してくれなかったのでストレスがマッハ
 ……何度でも言おう。
せめてタイトルに「1」とか起承転結の「起」でも通し番号があったら「ああ、続き物なんだな。まあ、この作家さんは実績あるからなあ」と思えてまだ許しますが……デカいタイトルの後でサブタイトルみたいな感じで続刊前提はやめてくれ
少女向け小説なんかによくありますが
一例:「かぐや物語〜まさか私が美少女戦士になるしかないのですって!?〜」「かぐや物語〜私のペットの金毛のウサ太郎がまさかこの美丈夫になったの!?〜」「かぐや物語〜ついに月へと帰還! 私は時の帝さま、ウサ太郎のどちらを選べば!?〜」
みたいな感じで一度本棚から落とせば、「どれが何巻だかわかんねえよ」とブチ切れたくなること間違いなしな一品揃いですよ! 女性なら本屋の少女向け小説棚に行くのは楽勝でしょうが、男ならAmazonなどで一度「彩雲国シリーズ」とか「今日から魔王〜」とか私も有名どころしか知りませんが、あの辺だけでも検索されて見るとよろしいのではないでしょうか。表紙だけではなく、サブタイトルもキラッキラしてますから。

 ネタバレあらすじー。
 高校一年生でラノベ作家を兼業している主人公。ペンネームは「和泉マサムネ」でほぼ本名。『銀狼シリーズ』というのを最近終わらせたので、その記念に初めて人前に顔を出して、サイン会を開くことに。その後の自分の評判が気になったので、エゴサーチ(作家や著名人が自分の名前や作品名などを検索して、悦に浸る行為。たまにひどいことを言われているのにもぶち当たる、もろ刃の剣)をして、「和泉先生、やっぱり若かったー!」「結構ゆったりお話させてくれたよなー。感想言えたし!」「俺なんか、握手もしてもらったぜ!」などと嬉しい感想をにんまりとしながら見て行くが……「和泉マサムネのサインの字、下手くそwww」というきっつい文章が目に入る。ブログなので実物の写真も上げられていて、「同意w」「うお、本気で汚いw」「小学生の落書きレベルww」などというコメントもあった。それでショックを受けたので、見たくはないけど、どうしても見てしまい……それが、自分のラノベの挿絵を描いてくれていた『エロマンガ先生』のブログ記事だということに気付く。エロマンガ先生とはデビュー以来の長い付き合いだが、担当編集を通して仕事をしているので、顔も性別も年齢もわからない。でも主人公は「ケッ。いつもめちゃくちゃエロ可愛い挿絵を描いてくれてるのは嬉しいけど、どうせ小汚い萌え豚おっさんだろ」と思っている。→そんなエロマンガ先生の情報を集めて行くと……動画サイトでイラストを生放送で描く読者サービスもやっているらしいので見に行く。生放送ではもちろん匿名でやっているが、流れるコメントで「エロマンガ先生キター!!」「待ってました!」「今度もエロイやつ希望!」と、もうファンにはバレバレ。エロマンガ先生は声を変質させる機能とお面を被っていて、その状態で主人公の『銀狼シリーズ』の紅兎ちゃんというキャラを描いて行く。全部描いたところで、「んじゃあ、今日はこの辺で。次に描くキャラは、このアニメ誌の中からリクエストしてちょ」と言って去った辺りで、着替えようとしていた。――webカメラを起動させたまま。そこで主人公はその部屋の後ろに置いてある、『自分が紗霧のために作った夕飯』を見て、「うおおおおおおぉぉぉぉおい! カメラを早く切れ! 早く! 取り返しのつかないことになるぞ!!」と、二階の紗霧の部屋をノックする。それでwebカメラは無事切られ、紗霧が『別名:開かずの間』のドアを開けて出て来た。「兄さん……。生放送見て、たの……?」「ああ。お前がエロマンガ先生だったんだな。俺が作家の和泉マサムネだよ」「そんな『エロ……』とか卑猥な名前の人なんて知らない。でも偶然だと思ってたのに……兄さんが本物の和泉先生なの?」「そうだとも。なんなら、俺が初めて挿絵のラフをもらった時に、エロマンガ先生に原稿用紙100枚分の感想を贈ったことや、『ヒロインの胸をもっと大きくしてください!』って注文したことを語ろうか?」「……うっ。やっぱり、兄さんなんだ……。あと、そんな卑猥な名前の人なんて知らないもん……」と、二人は初めて裏の顔を語り合った。→そして紗霧もちょっとは心を開いてくれると思ったが、相変わらず引き籠もり。そこに神野めぐみ(じんの -)という紗霧のクラスメイトが家にやってきて、「こんにちはー! あたし、和泉ちゃんのクラスメイトなんですけど、入学式があってから一度も来ないので、心配でお家にきました。紗霧ちゃんに会わせてくれないですかー?」と言ってくる。そしてめぐみは痴女発言をして、主人公が「(こいつ……臆面もねえ痴女だ! ビッチ乙!!)」と思いながら、「紗霧は、自分の部屋で自分にしか出来ないことをやってるんだよ。いつか心の扉が開くと思うから、いまはそっとしておいてやってくれ」と言う。だが紗霧が「どんどん!」と二階から足踏みをして主人公を呼び出し、「あの女……誰? 私、絶対に会わないけど……念のために、コレしていって」とスマホと同期させられるワイヤレスイヤホンを渡された。そしてめぐみのいるリビングに戻ると、「お兄さ〜ん。和泉ちゃんをなんとか学校に来させたいんですけど〜。あたし、学級委員長だからぁ〜。あれ? お兄さん、もしかしてあたしの香水にドキドキしちゃってますぅ?」「そんなことはない!」『このクソビッチ。兄さんも、鼻の下伸ばさないで』「(伸ばしてねえよ!)紗霧はな、パソコンを使ってすごいことをやってるんだ。だからそんな熱心にならなくっていいよ」「そうなんですか? ……じゃあ、ネット回線、解約してください。これでみんな万事解決です!」『ふざけるなあああああああああああああああああああああああっっ!!』と、めぐみの暴論に、紗霧がイヤホンからも周囲に響くような大声を放つ。それでイヤホンの存在に気付かれ、めぐみはわざと主人公に抱き着いたりする。「お兄さん、いまドキドキしてますねー? ちゅーとかしたことありますぅ?」という発言で、紗霧が「ドンドン! ドゴドゴドゴンッ! ドガッシャーーンッッ!!」という盛大な破壊音を鳴らして、ようやくめぐみは帰る。→ある日、主人公が担当さんにプロットを持って行こうと出版社へ。だがそこでは、担当の神楽坂(かぐらざか)さんという女性編集が中学生ぐらいのエルフ耳の女子と押し問答をしていた。なんでもこのエルフ耳の女子は、別の出版社で書いている、「山田エルフ」というアニメ化もする売れっ子作家らしい。主人公も前に著作を読んで感動したことがあるので、ファンだった。だがエルフは「エロマンガ先生を紹介してくれるだけでいいって言ってるでしょっ! ブログに何回も依頼のメールを送っても、エロマンガ先生は返信してくれないのよっ! アニメ化作家のわたしの作品のイラストを描けるんだから、光栄なことなのにっ!」という理由で出版社に押しかけてきたらしい。そして神楽坂さんが主人公に気付いてエルフとの話を打ち切ろうとするも、エルフは、「あんたが『和泉マサムネ』ぇ? そんなメディアミックスもしてない小物の作家より、わたしの作品で描いてくれた方が、エロマンガ先生も喜ぶから、あんたからも言ってやってよ!」と喧嘩腰。なので主人公も「うるせえ! お前だって、冒頭で意味もなくヒロインを全裸にしてるだろうが!」と言い返す。エルフが弓のおもちゃ(?)を出した辺りで警備員がやってきて、エルフは連れて行かれる。そして主人公は神楽坂さんにプロット……というか、出版原稿そのもの×三巻分×三シリーズを見せて、「これです! ちゃんと見てくださいね!」と押し付けた。後日、「この前のアレ、全部没ね。どれもこれもつまらないから」と言われて泣く。→めぐみがまたやってくる。しかも、今度はクラスメイト全員を連れて。そこで始まるクラスメイトたちによる、「和泉ちゃ〜ん! 早く学校に来てね〜!」「待ってるから〜!」「遅れてる勉強も教えてあげるよ〜!」と、『小さな親切、大きなお世話』な大合唱。主人公は紗霧がきっといまごろ布団にくるまって怯えているだろうと思って、めぐみに頼んで「すまんが、近所迷惑だからみんな帰ってくれ。ああ、ちなみにこの家の両隣は空き家だが、昔ホラー小説を書いていた作家が自殺した家でもある。いまも誰もいないのにピアノの音が聞こえたり、窓ガラスから白いワンピースの少女が覗いているかもな。その子は騒がしいのが嫌いなんだ」と、嘘を吐いて帰ってもらう。そして家に入ると、紗霧が珍しく主人公を呼んできて、「兄さん……窓の向こうの家に、さっき白いワンピースの人がいた……。しかも、ピアノの音も聞こえてくるの……」「ああ、そりゃ幻聴だろ」「でも聞こえるの! 見に行ってきて!」と言われて隣の家に行くと、そこの庭に入ってピアノがある辺りのガラス窓を外から覗くと、エルフが全裸でピアノを弾いていた。思わずインターフォンを鳴らして、エルフが出てくるのを待つと、「あら、あんたじゃない。なんで最近、アニメ化で入ってきた印税なんかで一括払いして買って引っ越してきたこの家に? もしかして、わたしのストーカーなの!?」「違ぇよ! 単なる隣の家の住人だ! それにお前、なんで全裸でピアノを弾いてんだよ! お陰でうちの妹が怖がってるんだぞ! ついでに証拠の回覧板だ、ほら!」「あっ、本当ね……。ネタを出すのには、全裸でピアノを弾くのがわたしのスタイルなのよ! それを覗くなんて変態!」「じゃあ、今度からはカーテン閉めてやれよな!」と口論を交わす。でも興味はあったので、エルフの買った家の全貌を見せてもらう。そんでもって、「な、なんだこのすげえ自分の本とキャラのグッズの山……!」「重版される度に送ってこられるのよ。グッズもね。あまりに余るから、サインでもしてあんたにあげようかしら?」「えっ、マジで!? じゃあ、全部に頼むわ」「あら、あんたってわたしの下僕(ファン)だったのね」と主人公は作家として負けた気分を味わいつつも意気投合。以後、結構な頻度でエルフの家に通うことに。エルフと仲良くなったので、「じゃあこの前の件だけど、担当さんに頼んで、エロマンガ先生に俺の原稿と一緒にお前の原稿を読んでもらう、ってことにしてやろうか?」「いいの?」「まあどうせ、俺の原稿が選ばれるだろうしな」「言うわね……! 負けないわよ!」とエルフもやる気を出す。→一ヶ月後の「エロマンガ先生に読んでもらう締切の前日」にエルフの家を訪ねると、エルフはそれまでのだらけた姿が嘘のように、パソコンに向かって作業していた。締切当日に主人公がエルフの家を訪ねると、完成原稿を交換し合って読み比べ。エルフの原稿は、世に出したら確実に売れるレベルで面白かった。だがエルフは――「こんなのって――ずるいわ! これ、あんたが妹のエロマンガ先生に向けて書いた作品じゃない! 勝てる訳ないわよ!」「えっ、紗霧のことがエロマンガ先生だってわかったのか!?」「当たり前よ! 原稿に表されてるわ! まあ、こんな原稿で心を揺さぶられるのは、わたしとあんたと――あんたの妹ぐらいだろうけどね!」そう言って、エルフは自分の大傑作を破り捨てた。そして主人公は、いまこそ紗霧の『開かずの間』を開けられることが出来るのではないか、と思って、エルフの仕事部屋(二階)の窓から、隣の紗霧の部屋にダイブする。「えっ、あんたまさかそこから飛び降りるつも――ちょ、エロマンガ先生ーーっっ! あんたのお兄さんに怪我させたくなければ、その窓を開けてやりなさーいっっ!!」という言葉で紗霧が窓を開けると、主人公がその胸にダイビング。ようやく主人公は、『開かずの間』に入ることが出来たのだった。そして目の前で主人公の原稿を読み、「こんな恥ずかしいの、私は出版して欲しく……ない。それに、私……好きな人がいるの」と言われて、主人公は少し心を開いてくれたが、この原稿(ラブレター)で紗霧に振られたことを確信した。→エピローグ。紗霧は相変わらず、引き籠もり。でも主人公は「俺は、この原稿を絶対に出版出来るものにするからなっ!」と宣言すると、そこでこれまで「誰もいない時にトイレ(二階にもあるもの)やお風呂」などをしていて、完璧な『開かずの間』を形成していた紗霧は、主人公の前で一歩だけドアの外に出たのだった。

 うーん、評価が難しいなあ。
文章のリーダビリティとテンポはいいんですが、伏線張りまくりで回収していないのがなんとも……。
つか、両親のことは最低限でいいから、まだ子供な二人を置いて、いまいったい何をしているのか教えて欲しかった。それに比べたら、エルフの耳が本物かどうかなんて些事ですよ。
 それと、紗霧が三年前から(または、もっと前から?)プロのイラストレーターをしているきっかけとかも描写して欲しかった。
 とりあえず、副題の『開かずの間』はクリアしましたが……疑問がいっぱいです。
 星3つ★★★☆☆、ってところでしょうか。でもやっぱり書き慣れている伏見先生らしく、続きが気になるので、2巻も買ったよ!ww
 あとはまあ……たまには、「アンタ」や「兄さん」じゃあなくて、「お兄ちゃん」と呼んでくれる、ちょっと難はあるけど素直で可愛い妹が見たいです、伏見先生……。

posted by mukudori at 20:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | 電撃文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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