2011年08月09日

Strange Strange/浅井 ラボ

Strange Strange (HJ文庫)Strange Strange (HJ文庫)
浅井ラボ しばの番茶

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登場人物が誰も好きになれないことを保証します

 あの浅井ラボが! 「され竜」の浅井ラボが! 狂想曲の指揮者・狂乱の貴公子の、あの浅井ラボが! 短編4つを引っ提げて、HJ文庫に帰ってきた! それも今度は頭に「暗黒」がつく短編集だ! 期待して待っていようぜ!


 いや、……結構好きになれましたよ?
特に「人でなしと恋」の主役二人。
あ、これだけだとわからないと思うので↑のキャッチコピー(今回は帯文をそのまま引用させてもらいました)に対しての私の返答です。

 それでは一つずつ紹介して行きましょうかね。あ、ここから下はかなりエグイことにも触れていますので、苦手な方は注意をば。

「ふくろおんな」……これは怖い!! こいつはヤバイぜ! 何がやばいかって、……これを最初に持ってきた浅井先生と編集の精神がヤバイ。だって初っ端から、人の首を引きちぎるわ、それをカエルや人形の胴体に縫い付けるわ、ラストも救いがないわ(全滅エンド)、ですよ? もう浅井ワールド全開! 読者は手出し無用! 好きなようにヤッチマイナー!
 出だしは、女子大生の会話から、「よくある都市伝説的なものを探検しに行こう!」……という感じで始まるのですが……読んでいて震えとページをめくる手が止められなかったですね。
まず言っておきますが……「遊ぼう」と言うと、人の首を狩りにやってくる「ふくろおんな」は実在しました。それも、人類が生まれると同時期に存在した、というんだからスケールが半端ない。……しかし、それにしては「ふくろおんな」の造型(紙袋を被っている・赤いワンピース……など)が現代的なんですよね。その辺りの詰めが少々甘かったというべきか。
 まあ、浅井ワールドに慣れている方にとっては「なかなかいいパンチ持ってるじゃねえか……」的な出だしだったと思います。それ以外の方にとっては……最悪トラウマになりますね。

「ぶひぶひ♥だらだら」……これはこの本の中で、唯一嫌いになれる人間が出てきていると言っていいですね。
主人公はいじめられっ子のオタクなデブです。……だが、デブはデブでも、「アクセル・ワールド」のハルとは大違いだよ!! こっちのデブはそりゃもう醜くて、キモイだけのピザオタです。
目を逸らしたくなるような、人間の嫌な部分をかき集めた主人公ですね。自分がやったことなのに、「僕じゃない、僕の所為じゃない」とかいつも言い訳して、「お前、他に言葉を知らねえのか。この豚野郎」と言いたくなります。これなら池永(イジメの主犯で、実質的にはこの物語の裏主人公)の気持ちも少しはわかりますね。
 この物語は、全体を通して見ると特筆すべき点が無いんですが(それでも殺人、四肢切断、寝取られ、スカトロ要素はありますww)……まあ、後書き代わりのエピローグ・チャットで、この豚野郎が「ふくろおんな」に殺されそうになっているところなので良し、としますか。

「人でなしと恋」……これは良かった! 主役のカップルが、これ以上ないくらいの「純愛」を見せてくれるんですよ。
 話は、カップルの女の方……「和音」が実は恋人にも内緒にしてたけど……「人食い」でした。だがしかし、それをも受け止めて和音を愛する「啓吾」(カップルの男の方)。そして二人は「人狩り」を始めて和音の「食事」を作るんですが……そこにこれまで「日本全国に存在する人食い」によって大切な人を奪われた人たちの復讐の集まり、「組織」がやってきます。暴走して啓吾にも襲い掛かってしまう和音。果たして、二人の愛の行方は――!?
 ……これがまた泣けるんですよ。
「希望なんてない、まったく無い。でも二人でいると、『完全』って気がする。俺たちが間違っているんだろうけど、たぶんそうなんだ」
和音に襲われ、一時は「組織」の元に身を寄せた啓吾。しかし和音が「組織」の手によって殺されそうになって、初めてわかる自分の中の歪んだ愛情。
……そして啓吾は「組織」を裏切ります。たとえまた、「組織」が襲ってこようとも。自分が和音に襲われようとも。……彼女を愛している自分の気持ちには、嘘が吐けないのだから、と。
「組織」を一時追い払った二人の行方は書いてありませんが、どうか二人が、この世の「幸せな場所」に逃げのびることを祈って止みません。

「Last Day Monster」……夜の街にいきなり異形のモンスターの集団がやってきて!? どうするOL・貴子!! ……といったお話です。
 この話は、OLの機転とサバイバル能力に目を瞠りますね。まさかただの(ちょっとストレス溜まり気味の)OLがグロイモンスター相手にあそこまで奮迅するとは……。
 後は、異形のモンスターの描写でしょうか。本っっっっ当に気持ち悪いんですよ。「自分がコイツに食われるぐらいなら自殺するな」……ってぐらい。
ちょっとその中の一体を挙げてみますね。
「人間より大きなトンボが飛んでいる。羽は透明な昆虫のものではなく、肉。頭部は鰐。口は細い針だった。急降下して上昇。触手みたいな足には、おっさんが絡めとられている。空中でトンボの鰐頭が下がり、おっさんの右目に管を入れていた。管がポンプみたいになり、眼球や、桃色の脳味噌を吸い上げていく様子が見えた。」
……これですよ、もう。
あ、ちなみにこの話(も?)ですが、救いは無いですwたぶん、日本……いや、世界が滅びてるだろうなー。
とことん「グロイモンスターが見たい!」「OL細腕奮闘記(笑)が見たい!」という方にはオススメです。

 それにしても浅井先生、「人が死ぬ(殺された)瞬間の脱糞描写」好きすぎだろww私が新しい世界への扉を開いたらどうしてくれるんだ!ww

 個人的には「人でなしと恋」で軽くほんわかさせておいて、→「ぶひぶひ♥だらだら」で急転直下にさせ、→「ふくろおんな」で止めを刺し、→「Last Day Monster」で逃げ場をなくす……って感じの構成にした方が良かったですね。
 でも、読んだら夢に見ること間違いなし。貴方も私のように、真夜中に窓ガラスを「ふくろおんな」が叩いてくる恐怖で眠れなくなるといいですよ!!
どれもこれもエグイですが、傑作には違いないです。星5つ★★★★★。

posted by mukudori at 00:00 | Comment(3) | TrackBack(0) | HJ文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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