2011年07月18日

旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。/萬屋 直人

旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。 (電撃文庫)旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。 (電撃文庫)
萬屋 直人 方密

メディアワークス 2008-03-10
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少年と少女の物語

 世界は「喪失症」と呼ばれる病に侵されていた。ふとした瞬間から、自分の名前が消え、色素が薄くなり、そして『存在』すらも消えてしまうのだ――。そんな静かな世界で、旅をする少年と少女の物語。


 これは素晴らしかった!
一切の無駄がない構成、キャラ描写、そして「喪失症」という世界を襲う病のオリジナリティ
どうして最終選考止まりだったのか不思議でなりません。

 序盤での二人と、取締役と秘書さんとの出会いは『大会社の取締役』と『その秘書』という恋人でもない、けれども友人以上の信頼関係を築いている微妙な距離感の二人と出会ったことで少年と少女の間にある微妙な距離感も見えてきました。読者への導入としては非常に良かったと思います。

 そして二人にとっても読者にとっても忘れがたい『ボス』との出会い――3人でのプロペラ機製作を通しての達成感は、まるで自分もその場にいたような気分にさせられました。
 けれどそれだけに、ボスの『喪失』が悲しくて仕方なかったです。でもボスは――最後の最期で自分が仲間と共に追ってきた夢を完成させられたことで満足だったんではないでしょうか。

 私はこの点で、あることを考えつきました。突拍子もないことなんですけどね。
……それは「喪失症」という病は、「自分がその現状に満足した」時点で、完全に侵されるものではないか、と。

 だから少年と少女の二人が「喪失症」に侵されることは当分ないでしょう。きっと。二人が満足するまでは長いですから。

 二人は旅をずっと続けるのでしょう。続けられるのでしょう。自分たちが言った、
「「世界の果てまで」」
という言葉を現実にするまで。私はそう信じてやみません。星5つ★★★★★。

posted by mukudori at 00:00 | Comment(4) | TrackBack(0) | 電撃文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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