2016年09月11日

あくまで魔王の究極菜譜 ~行列のできる魔王食堂~/多宇部貞人

今回の更新は、去年の電撃大賞で金賞受賞のヴァルハラの晩ご飯 〜イノシシとドラゴンの串料理〜<ヴァルハラの晩ご飯> (電撃文庫) -
ヴァルハラの晩ご飯 〜イノシシとドラゴンの串料理〜<ヴァルハラの晩ご飯> (電撃文庫) -
↑こいつと一緒に読み比べしていたら、こっちのつい2ヶ月前発売のやつの方が先に読めてしまったので、たぶんこの時の自分はかなり腹減ってたんでしょうね。記憶から忘れないうちにこっちの方をアップさせていただきます、サーセン。
いや、私も今も腹減って夕食に日清のUFOを2つ食ってしまうという暴食王的な感じな有り様なんですがw でもソースと塩で味には変化を求めてみたよ!(そういう問題でもない)その辺りで本作の主人公に共感してサクサク読めたんでしょうか(笑)。

あくまで魔王の究極菜譜 ~行列のできる魔王食堂~ (電撃文庫) (電撃文庫)
多宇部貞人 zpolice

KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2016-07-09
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余の仲間になれば、世界の半分……いや料理の半分をお前にやろう。

 暴食王・ベルゼブブ……彼が魔界を統一した理由は「最高の美味を味わいたいから」。そしてそんな彼が魔界統一記念に部下の四艶公(よんえんこう)を呼んで魔界の『究極菜譜』でのパーティを開こうとしていた時、勇者一味が襲撃してきて!? だがベルゼブブは勇者たちの攻撃など意にも介さない……どころか出されてくる料理たちに目を奪われているのに、魔法使いの魔法も蠅が引っ掻いてきたぐらいのレベルだ。しかし戦闘中で城が壊れてきて、料理に埃が舞い落ちろうとしていた時、ベルゼブブが身を挺して料理を守ろうとした。まだ一口も食べていない……そこを突いての勇者たちの攻撃でベルゼブブは命を落とす。次に目覚めた時、ベルゼブブは人界の赤子として転生していた。魔王としての知識と魔力は持ったまま。そして自分の両親は食堂を経営していて父親は腕の良い料理人だという。赤子らしくなく、ニヤリと笑ったその顔を、今は誰も知らない……。


 後で気付きましたが……これ、シロクロネクロより面白かったですよ作者先生。
……んなことを言ってても時間の経過もありますから、デビュー作と比較しても自然とスキルアップはしてますよね。

 さて、そんなネタバレあらすじは――今日もボルテージMAXで行くぜ!!(夕飯の焼きそばテンションがまだ残っている)
 魔王ベルゼブブ、魔界統一記念に助力してくれた四艶公を招待した晩餐会(祝賀会)を開く。そこに出す料理は『暴食大公(美食王)』なベルゼブブが魔界の超凶悪な魔物たちからこのベルゼブブ自らが狩りに行ったりもした超難関食材たちをも含む、木っ端悪魔だが手先が器用なインプたちが作る『究極菜譜(ターブル・ドット)』。しかし料理は出来ても、待てども待てども来ない四艶公たちにベルゼブブは「我慢ならん!」となって料理の匂いを嗅ぐだけに留めるが、それでもまだ来ない四艶公。そうしているとベルゼブブの屋敷に勇者たち三人のパーティがベルゼブブを退治しにやって来る……がベルゼブブは料理の匂いを嗅ぐのに陶酔しており、屋敷を管理しているインプ族たちが「魔王さま! ゆ、勇者たちが攻めて来てえぇっ……げふうっっ!!」と殺されているのにも気付かずに「おお、おまえたちよ。なんと素敵な姿をしておる。全部で三匹か……くっくっく、食いごたえがあるのう(妖精の蒸し焼きを見ながら)」「な、なんだと!? 魔王ベルゼブブのやつ、振り向きもせずにこっちのパーティの人数が分かるというのか!? 敵ながら、手強い……」とかまるでアンジャッシュの言葉勘違い系コントのような遣り取りをしているが、勇者たちとインプ族(料理にうっとりしている魔王は除く)の間で戦いがなされ、剣や魔法によってただでさえぼろくなっていた魔王城が壊れ始める。そこで魔王は「なんだ? さっきから周りがうるさい上に天井から埃が……――いかん! これではせっかくの料理が台無しになるではないか!!」と思って慌てて料理たちを避難させようとした魔王に隙が出来て、そこを勇者パーティが合体技を喰らわせるとついに魔王城は崩壊。それにはさすがに魔王ベルゼブブも敵わなかったようで、自分の身体よりも一口も食べれなかった『究極菜譜』を気にし、魔王ベルゼブブとしての生を終えた。→そして魔王が転生したのは、地上のハーヴェスタという冒険者が集う、活気のある土地であった。そこにいる料理人ジンとその妻ミモザ。魔王ベルゼブブはベルという名前を授けられて……なんと、前世の魔王としての記憶も魔力も持ったまま産まれ落ちてきた。そして最初の授乳の時には「こんなにも乳児の身体が求めてやまないものがあるのか! ママ殿、感謝する。他の母親のものも飲んでみたいが……さすがにみんなが寝静まった深夜に動くか……」と結構やりたい放題。決行時は自分の乳児の身体ではさすがに歩き回れないので、魔力を使って宙に浮き、隣のベッドに行こうとしたところをミモザや夜回りの看護婦に見つかって、翌日には魔法学校の講師を呼ばれて「この赤子はとてつもない魔力を秘めている! 大きくなったら是非とも私のいる魔法学校に!」とスカウトされる。→そして大きくなったベルは魔法学校に行かされ、暇な時は父親・ジンの経営する『スカイパレス』という大衆食堂の手伝いをして料理スキルを高める。その裏では正直、魔王時代の経験で主席の成績なんて鼻でもほじりながら取れる魔法学校なんて辞めて、さっさと人間世界の『究極菜譜』を作りたかった。そうした日々を送っていると、店の常連の冒険者・アドニスによってジンがいきなり倒れてしまって病院に搬送されたと聞かされる。原因は腱鞘炎だったが、ミモザがあまりに心配するしベルも良い機会だと思って「この機会にパパ殿はゆっくり休むがよい。余がその間、店を切り盛りしてみせよう」と告げる。ジンはしばらく渋っていたが、ミモザのお願いもあって頷いた。→そしてベルが店に戻ってこれからのことを考えていると、いきなり魔族っぽい角や剣を装備をした銀髪の少女が現れる。ベルは驚くが、しばらくして「その剣……お前は四艶公の一人のアースタ・ロット(愛称:アーシェ)か?」と言うが「そうだ! だがお前からは陛下の魔力を感じるが、神々しき陛下の御姿ではない!! どこにやった! 返せ、私の愛しき尊敬する陛下を!!」といきなり斬り掛かる。耳を貸さないアーシェにベルは市場で買ったフルーツをアーシェの剣を避けつつ、なお且つその剣でフルーツの皮を剥きながらフルーツロールケーキを作って喰わせた。すると甘党なアーシェは「こ、これは懐かしき陛下のロールケーキの味!! ま、まさか貴方が本当に魔王ベルゼブブ陛下なのですか……?」と言って土下座してくるところに四艶公の一人のメフィが「あーやっぱりこの人が陛下だったにゃー」と駆け寄ってくる。そうしてスカイパレスに集う四艶公の他二人、几帳面なフルーレと妖艶なルキ。全員、ベルゼブブが死んだ晩餐会の時は勇者たちの軍勢がそれぞれの城に押し寄せて来ていたため、晩餐会に行く余裕も無かったと言う。それで特に魔王にメロメロなアーシェは「きっと陛下はどこかで生き延びていらっしゃる!!」と考え、探すために人間界に下りて来た。それで四人は目下、ベルの野望のお手伝いをすることに。だって人間の寿命は魔族に比べて短いのだから。ちなみにこっそり魔王時代のベルゼブブに踏まれてぐちゃぐちゃのスライムにされることを望んでいたドMな魔軍師のアゲイト(男)も来ていたが、町民たちに踏まれまくって、這這の体で山奥に逃げ出しているとそこのログハウスに住んでいた老人に助けられ、どうやらその老人も魔族らしかった……。→四人の美少女(魔法で人間体に変身した)ウエイトレスが入って食堂は更に大繁盛。そうしていると、上層階から来たギルドのお達しが。なんでも、ベルの父親であるジンは昔上層階にあった貴族などが住み、上級者が集まる冒険者ギルドの食堂ギルドを束ねていたNo.1料理人であったが、現在の下層部に集うお金の無い住民や冒険者たちは栄養も無く不味い食事しか食べられないことを知り、その当時の名声を勝手に捨てていまの『スカイパレス』を開いたという。それで下層部の民たちはジンに恩義を感じてアーチを作ったり、カーテンを縫ってやったり、食堂のテーブルを作ってプレゼントしてやった……という涙ちょちょぎれる、ベルが産まれる以前の話があった。そのことを現在も上層ギルドの連中は恨んでおり、「ジンが入院している今だ!」と考えて一週間以内にスカイパレスの立ち退きを命じた。これには上層ギルドを統治して冒険者を束ねる『豪商会議』にて富と名声が周知されている五人の大物豪商たちが3:0の多数決にて(ただし無効票となった2票はその豪商たちが仕事に忙殺されて出席していなかったので無効票)決めているので、覆すには難しい。それでベルは諜報活動に長けているメフィに現在街にいる3人の動向を監視させるが、鼻持ちならないフランシスと元・冒険者なホークは見つかるが鉱山王のソーベインは遠目からでしかも姿しか見えなかった、と言われる。そしてベルは一番ジンのことを恨んでいるらしいフランシスに挑戦状を叩き付け、逆にフランシスに「それならば、自分の経営する料理ギルドの精鋭との料理勝負の場を設けましょう。判定人はそれぞれ、ホーク殿とソーベイン殿で。そうしたら、この会議の過半数も覆りますでしょう」と言われてベルは思わずその喧嘩を買った。→最初のホークに提供する料理はホークが昔冒険者だったころに食べた非常に強い『エンシャント(古代の、という意味)ドラゴン』を狩った際に食べたドラゴンステーキの味が、二度と食べられないので今でも忘れられない……という情報を訊いたので、ベルたちは勝つための『肉』を調達しに行った……。→勝負当日。対戦相手はフランシスのお抱え料理人のスコーピオン。微妙なエセ中国語でベルに軽口叩きながら調理して行くが、その技術は本物。出来上がるのはスコーピオンが早く、ベルは遅れを取り、スコーピオンの激辛丼料理に中毒を持たされたかのように食べているホークにベルは自分の肉丼のとある部分の肉を食べさせると舌が復活する。その部分は――タン(舌)。そしてベルの肉丼の肉の真実に気付いたホークの目からは思わず涙。そう、それはベルや四艶公が朝早くからエンシャント・ドラゴンを狩りに行って、鮮度が落ちないうちに〆て調理をしたものだった。ホークはこの肉の味をまた食べれたことに驚くが、ベルの言うところによると「実は、エンシャントドラゴンも普通のドラゴンも市場に出された時には味はあまり変わらんのだ。ただ、エンシャントドラゴンは狩ってから鮮度が落ちるのがとてつもなく速いのでな。それをホーク殿は狩った際、すぐにステーキにして食べた味を舌が憶えていたということだろう」と告げる。もちろん、この勝者はベル。→次は鉱山王ソーベインの説得。しかしソーベインは滅多に人前に出ないため、メフィの探知技術でも足取りが掴めない。そこにやって来たのはドMの魔軍師アゲイト。ソーベインに助けられたことをベルたちに教えると、アーシェが「――ハッ!? そういえば……以前私の父が人間界に侵略に行こうとした際……そのぅ、人にはちょっと言えないすこ〜〜し変わった性癖の持ち主の部下が一人いなくなったと言っていたような……」と言うので、ベルは「なるほど、アーシェのところの魔族ならば、その土地の特産品である知恵の実たる魔界の林檎が好物だろう。獲りに行ってくるか」と言ってみんなで一旦魔界に戻ることに。→魔法で魔界のアーシェの一族の治める土地の近くに転送されると、ベルたちはアーシェの城が他の魔族――ベルとあまり仲良くなかったルシファーの部下であるサタナエルたちの軍が攻め込んでいて、知恵の実を取るどころではなくなっているので慌てて全員でサタナエル軍を追い払うことに。雑魚たちは四艶公たちが担当するが、サタナエルだけは「貴様……知恵の実だけでなく、よくも畑を荒らして育っている野菜たちを足蹴にしたな!」と直々に成敗する構えを見せた。ベルは魔法で巨大なフライパンを出現させてサタナエルに応戦する。それでサタナエルは少年(ベル)がベルゼブブだと理解し、それに驚いている間にベルは宣戦布告とばかりにサタナエルを巨大フライパンをフルスイングで空に殴り出し、ルシファーの居城にヒットさせた。→サタナエル軍による侵攻戦争が終わり、アーシェが民に知恵の実を譲って欲しいと頼むが戦火が知恵の実の畑にも移っていて、残ったのはこの一つだけですが……と言われて最後の一つを自分たちの命を助けてくれたベルに渡そうとするが、ベルは「……要らぬ。この実はまだ熟しておらぬ! お主らは見事、この実を余の舌が満足するレベルまでに改良し、繁殖させてみよ!!」と言ってまた人間界に戻って行った。→料理勝負の前の日。スカイパレスに誰かがやって来る。その相手はフランシスが遣わした料理人であり――ベルゼブブの八代前の魔王だった『貪食王のベヘモット』だった。そしてベヘモットはポケットからベルがアーシェの土地の民に返した知恵の実を出して来て、「お前らにとってはよく見覚えがある果物だろう? まあ、所詮こんなものは二流の食材だから俺の腕に見合った物ではないから勝負には使わないがな」と言って挑発してくる。その上、ソーベインが魔族であることを知っていて自分が勝負の場に出す物であるベヘモットの所為で絶滅した『リヴァイアサンのヒレの煮込み』まで置き土産にして行って、その味にベルたちは敵ながら感嘆してしまい、次の勝負に頭を抱えた。→勝負当日。ベヘモットは警告通り、『リヴァイアサンのヒレの姿煮』を出して来た。魔族であるソーベインはそれを一口食べただけでもう脳内が魅了されてベヘモットの言うことを聞くようになる。ベルも高級食材のエビのクリームパスタを作る予定だったが、それを見てしまっては心の中で負けを認めざるを得なかった。厨房で立ち竦んでしまったベルだが、病床の父親が言っていた言葉を思い出し、いきなり適当な籠から林檎を取り出し、『グラタン・コンプレ(林檎のグラタン)』を作りだす。そんなベルに四艶公も敵も呆気に取られるが、ベルはほんのりと笑いながら調理をこなして行った。そして完成した林檎のグラタンを食べさせようとするが、ベヘモットが「あやつの料理は食べるでないぞ。そして俺の勝ちだと宣言しろ!」と命ずるので、ベルも観戦席にいるフルーレを呼び出して「フルーレ、命令……いや罵倒も含んだ口調でソーベインにこのグラタンを食べろ、と言え。居丈高に、だ」と命ずるとフルーレが罵倒も入れながらソーベインに命令するとベヘモットの暗示が解けたかのようで、ベルのグラタンを口にした。そう、ソーベインの小屋の中には何故か三角木馬や手枷やチェーンや鞭などの怪しげな物があった……とベルは思い出していて、昔人間界に来てそのまま魔界に戻らなかった時もアーシェの言う「人にはあまり言えない性癖の持ち主」→「ソーベインはドM」→「ドSな人間の女性に出会ったから、惚れ込んで魔界に帰ることを止めた」という理論でSッ気のあるフルーレの命令なら聞くだろうという策が成功した。そして正気に戻ったソーベインは「心を暖かくしてくれたベルの料理の勝ち」だと宣言した。その判定に憤るベヘモットは知恵の実をポケットから取り出すと、拳で砕こうとする。しかしベルはじっと静かに見守っているままで、「ベヘモットよ、お前にその実を砕くことは出来ぬよ。お主の料理を一口でも食べれば理解る。貴様もすでに根っからの料理人になっておるのだ。食材を無駄にすることなど出来ぬはずだ」というベルの言葉にベヘモットはその通りだったらしく、負けを認めて知恵の実をベルに投げて返して、また修行の旅に出掛けて行った。アーシェに知恵の実を渡すと、アーシェは感極まってベルに抱き着く。しかし四艶公の中でも戦闘向きで怪力なアーシェはベルの背骨に多大なダメージを与えたのだった。→エピローグ。父の見舞いに行ったベルは最後の勝負の顛末を話すとジンは息子が自分の言ったことの意味が理解ってくれたようで安心していた。そこでベルは父のために林檎を剥いてやることに。向こうが透けて見えるほど薄い皮、そして病床の父が食べやすいように小さくカットした林檎にした。なお、林檎の皮は一筆書きにされていて、「はやくげんきになってね」とベルの照れ隠しの文字が皿の上に書かれていた。この場には親子三人のほのぼのとした空間が広がっていた。きっとベルはジンが復帰した後も『究極菜譜』を求めて邁進して行くのだろう――。


 まさに魔王時代も転生時代も「(美味しい食事のために)一狩り行こうぜ!!」って感じでしたねww
 しかし難点としては主人公の名前が魔王時代が「ベルゼブブ」だから→人間名「ベル」というのは……ちょっとどこかの某GA文庫さんの看板タイトル作品の主人公を思い起こさせますね。ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか (GA文庫) -
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか (GA文庫) -
 それに魔王時代からのベルゼブブですが、「究極菜譜であっても、料理は独りで食べるより、気心の知れた大人数で食べた方が圧倒的に美味いのでな」などという我が儘ではありますし、基本的に特に料理に対しては敵地を侵略したりする暴君でしたが、普通の一般人らしいことも考えていたりして……。その辺りをヒントにして、だんだんと親父さんをも超える料理人になれるといいさ、ベル。
これで親父さんがベルゼブブの先代の魔王とかだったら面白いんだけどww
 それとちょっと気になったのが、あらすじの下手さ(この場合の『あらすじ』はうちで取り扱っているような『ネタバレあらすじ』的なあらすじではなく、普通に本屋に並んでいる紙の本に記載してあるような編集者が考えて書く(たぶん)あらすじです)。
「表紙の女キャラのデザイン見りゃわかるだろ!」と言われればそれまでですが、帯の裏に書いてあるのを見ても、魔王のベルゼブブが転生した先が「人間界で〜」と書いてあるだけなので、それに電撃文庫から出ているお話なのでついつい『はたらく魔王さま』はたらく魔王さま! (電撃文庫) -
はたらく魔王さま! (電撃文庫) -

を想起してしまうんですよね。だからこっちの普通のジャパン的な人間世界に転生させた方が制約がたくさんあって、高校生ぐらいの子供が厨房を切り盛りするので親的に子供の学業や衛生面を心配して「ベル、店は任せるが……一ヶ月だけだ! お前が高校でトップクラスの成績なのは知っているが、それ以上を過ぎたら俺は這ってでも退院するからな!! 高校にはちゃんと行けよ!」「うむ、あい理解ったぞ、パパ殿!」「でも心配だわ、ベルちゃん独りで切り盛りするなんて……。それなら、私も常にベルちゃんと一緒にお店に居た方がいいわよね? パパのことは心配だけれど」「いや、ママ殿もこれまで通りにパパ殿の見舞いに毎日行くのは構わんが、とりあえず衛生管理者免状取得のために明日の一日だけは講習に通いに行って免許を貰って来てくれ! 今の我が家の店の免状の管理者名義はパパ殿なのでな。それに店を手伝ってくれるという昔の配下……いや、高校のクラスメイトも見つけているのでな」「それぐらいでいいの? 分かったわ!」「……ということで四艶公も、店を開けたら手洗いはしっかりするように! O-157を始めとする食中毒には気をつけねばな!」とか現代の法律に縛られたりして面白いじゃん? とか思えてしまったり。
 また、普通に本書の料理勝負でも
スコーピオン「くくく、ワタシの捌きたての柔らかい肉質の仔牛のロースト(適当)に敵う訳がないだろアルね!」
ベル「甘いな。人工甘味料のような甘さだな、お主の考えは。突っ込む気力も失せたわ」
ホーク「スコーピオン、確かに美味かったぜ。そんで、そっちの兄ちゃんは何を出してくれるんでえ?」
ベル「余の料理はこれだ」
スコーピオン&ホーク「「ナニィィ!?」」
スコーピオン「ワタシのと同じ料理じゃないアルか! パクリある! パクリには謝罪を(ry」
ベル「一食即解(食えば解る)」
ホーク「わかったよ……ん? これは、先に出されたスコーピオンのより、断然ウメェエエエエ!!」
スコーピオン「ど、どういうことアルか!?」
ベル「料理人の端くれともあろう者が、『イノシン酸』の効果を知らないのか。魚も肉も……実は獲れたてよりも数日熟成させてイノシン酸、つまり『旨味』が増した頃合いが最高に美味なのだ。ホーク殿の食した昔の思い出のものも、捌きたての仔牛ではなくそこの牧場主がケチって嘘を吐いたのかは知らんが捌いてしばらく置いていたものを使ったのだろうな」
スコーピオン&ホーク「「な、なんだってー!?」」

みたいな感じで。
 というか、最初はそういう現実的な蘊蓄も交えてくるのも期待していたのに、読んでみたら「え、やっぱり料理っていう題材を扱っていても、結局最終的にファンタジー食材だからギャグにする異世界設定なのかよ……」と思って少し期待外れでしたね。
 それとスコーピオンが勝負に使った『雨雲豚』なんですが……いくらファンタジー世界のファンタジー食材で揚げ焼きにしたとしても、現在の地球にあるような『無菌豚』のような表記はされていないので、ベルが地の文で「外はカリッと、中はレアになっているのか!?」とか書かれていたので、この後のホークは確実に病院直行コースだよな……と思いましたね。
それと、スコーピオンの『めっちゃ辛い揚げ豚肉丼』を食べた後ではホークの舌が麻痺して、後から出したベルの肉丼を食べても味がしない……という展開は新装版 中華一番!(1) (講談社漫画文庫) -
新装版 中華一番!(1) (講談社漫画文庫) -
で見ましたね。でもアレでは悔しくも味方側のレオンが負けてしまいましたが、こっちはベルが魔王的無双をしてくれたのでスッキリしました。ええ、これこそ同位同食(医食同源)ですよ。この作者先生、絶対中華一番ファンだと確信しましたぜ……!!
 いろいろと難癖付けましたが、読み始めてみたら意外とぐいぐいと引き込まれる感じだったので、もう少しばかり料理と食べたキャラクターの演出に意外性があれば良かったです。一番面白かったのはやはり最初の授乳シーンだったので。だって普通のラノベで主人公が赤ちゃんの時に授乳のテイスティングを読者(視聴者)に伝えるシーンとか無いですよ! これだけでこの本を買った半額程度の価値はありましたね。
次に全員でのエンシャントドラゴン狩り。ベルたちは自分たちの利益のためにやっているけれど、近くの村人とドラゴンの生贄にされる娘にとってはもう語り継がれる伝説レベルになっているのには、本編から少しずれているけれどそういう背景を見せてくれるから納得が行くし、別の面でも「俺TUEEE!」で他の部分に(生贄を差し出す村人たち)も僥倖的イベントになっているから一石二鳥で食前に出されたドリンクというか、お得感というプライスレスな感じを与えてくれるんですよね。
 ですが最後の最後でアドニスが「まー、魔王の記憶も魔力も持ってるようだけど、意外と人間界に馴染んでるようだし、一般人に危害を及ぼさない限りはもうちょっと見守っていようかねえ。何かあれば俺が出る、って感じで」とか言ってて、「は? お前らが、魔王ベルゼブブの城に特攻しに来た時はマジで魔王の小指一本ぐらいで殺されるぐらいだったのに、あくまで偶然魔王の時のベルゼブブが死んだことを理解しとけよ? そして倒せたと思っているのは本当に勘違いだからな?」……という感じでしたので最後の最後でクソ不味いデザートを出された気分でしたね。

 そんな感じで星4つ★★★★☆。
でも普通の料理漫画が好きな人には逆にあまりオススメ出来ない……。ですが一風変わった「俺TUEEE!」が読みたい人にはオススメです。
あ、食戟のソーマが好きな人にはオススメかもしれません(笑)。四艶公、カワユスですから。でも食事を食べて「はあ、はあ……もう駄目ぇ……」「もっと食べたいのぉ……」とかしどけなく言ってますけど服が弾けているとかの描写や挿絵は無いのであしからず。
四艶公の中では表紙で一番目立っている「陛下、陛下!」と仔犬のように懐いているアーシェが個人的にはやっぱり一押しですが、ルキは現在の人間であまり金品を持っていないベルには恋愛感情とかは無さげなので除外してフルーレとメフィが今後デレてくれることを期待しています。
posted by mukudori at 04:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 電撃文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする